2001 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠子宮におけるステロイドホルモン機能の解析と環境汚染物質の影響に関する研究
Project/Area Number |
13760227
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
石村 隆太 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域, 研究員 (70321718)
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Keywords | 胎盤 / ダイオキシン / 子宮腺部位 |
Research Abstract |
胎盤は、子宮内膜から形成される脱落膜に、胎仔の栄養膜細胞が浸潤して形成される。この脱落膜化および浸潤過程は、ステロイドホルモンによる制御下にあることが示唆されているものの、ステロイドホルモンの標的細胞およびその細胞増殖・分化制御については、不明な点が多い。一方、ダイオキシン等の内分泌攪乱物質は、ヒトや野生動物において流産や死産をおこすことが知られているが、その一つの原因として、妊娠子営におけるステロイド調節系を乱すことが示唆されていた。これらのことを踏まえ、本研究では、課題1)妊娠中の子宮内の局所的なステロイドホルモンの量と、子宮内膜の増殖、脱落膜化、栄養膜細胞の浸潤との関連性を明らかにし、課題2)抗エストロジェン作用を有するダイオキシン(TCDD)を用いて妊娠維持の阻害メカニズムを明らかにしていく。 本年度は、課題1)に対する研究として、先ずSprague-Dawleyラットを用い、妊娠の各ステージ(妊娠8、10、11、12、13、14、16、18、20、21日)のラットを用意して、母体血液と卵巣の回収、および子宮を切開し、胎盤、子宮内膜腺部、および内膜腺部を含まない子宮を精緻に分離し、回収した。現在、各部位における各種ステロイド合成遺伝子の発現量を測定している。また、上述の妊娠各ステージの妊娠子宮全体の組織切片を作成し、未だ報告の少ない子宮腺部位の発達について観察を行った。子宮腺部位は、妊娠10日目(GD10)頃から最を増し、GD16頃に最大になりその後緩やかに減少することが明らかとなった。次に課題2)への研究として、ホルツマンラットのGD15に1.6mg/kgのTCDDを曝露した動物、およびSDラットのGD8-10に総量2mg/kgTCDDを曝露した動物を用意した。ホルツマンラットGD20の胎盤では各種ステロイド合成酵素の発現量には変化が見られなかったことを明らかにしている(Ishimura et al., Toxicol Appl Pharmacol. 2002 178:161-171を参照)。しかし、妊娠初期に曝露したSDラットでは、TCDD爆露により子宮腺部位が減少することが明らかとなった。これらのことから、妊娠中期の子宮腺部位が内分泌かく乱物質の一つの標的組織である可能性が明らかとなってきた。来年度は、SDラット妊娠中期の子宮腺部位を対照として、各種ステロイド合成酵素の発現を精査する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Ishimura R, Ohsako S, Miyabara Y, Sakaue M, Kawakami T, Aoki Y, Yonemoto J, Tohyama C.: "Increased glycogen content and glucose transporter 3 mRNA level in the placenta of Holtzman rats after exposure to 2, 3, 7, 8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin."Toxicol Appl Pharmacol. 178(3). 161-171 (2002)