Research Abstract |
今年度は,昨年度に引き続き,カベオラのクラスター形成機構の解析とクラスターごとの機能解析について研究を行った.クラスター形成因子のスクリーニングを行うため,免疫組織化学的方法により,クラスター強陽性細胞の探索を行った.その結果,心筋細胞において,T管と思われる構造にカベオリン-1陽性の反応が検出された.これまでに横紋筋(骨格筋,心筋)におけるカベオリン-1の発現,局在に関する詳細な報告はなされていないことから,今回の結果は,新たなカベオリン-1の局在を見出した可能性がある.T管はカベオラが多数集合し,癒合することで形成されると考えられており,心筋はいわば,カベオラのクラスター形成能が非常に高い細胞であると言える.現在,免疫電顕法等により心筋におけるカベオリン-1の超微細局在の検討を行っている.また,カベオラクラスターごとの機能解析を行っている過程で,風邪の主要原因ウイルスの一つである,ヒトコロナウイルスの細胞内エントリーにおいて興味深い知見を得た.ヒトコロナウイルス229Eは,細胞に結合後,すぐ細胞内へ侵入せずに,ラフトを架橋しながら細胞膜上をカベオラクラスターへ移動し,カベオラもしくはその近傍から細胞内へ侵入すること,そして,この移動,侵入経路は膜コレステロール量に依存することが明らかとなった.従来,SV40のような非エンベロープウイルスがカベオラから細胞内へ侵入するという報告はあるが,コロナウイルスのようなエンベロープウイルスが細胞に結合後,どのようにしてカベオラクラスターへ移動し,カベオラから細胞内へ侵入するかは不明である.今後,クラスターごとの機能解析を含めて,コロナウイルスの細胞内侵入機構を明らかにすることは,コロナウイルスによる上気道感染のメカニズムを解明する上で,重要であると考えられる.
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