Research Abstract |
【研究の背景および目的】サイトケラチン(Cytokeratin, CK)は細胞質内に存在する蛋白で,20数種類のサブタイプが報告されている.CKは腫瘍の種類あるいは分化度によってサブタイプの発現が異なることが内臓臓器の腫瘍では知られている.本年度我々は,正常皮膚および腫瘍性疾患を用いて,CK発現の差異を検討した.【研究の対象と実験方法】正常皮膚は剖検例10例を用いた.腫瘍性疾患として,脂漏性角化症10例,基底細胞癌10例,日光角化症10例,ボーエン病10病,ケラトアカントーマ10例,イボ状癌3例,扁平上皮癌15例(高分化型5例,中分化型5例,低分化型5例)を用いた.免疫組織化学的検討を行いABC望で検索した.【結果】A.正常皮膚では発現部位により,以下の1-7に分類された.1.表皮全層性,2.有棘層より浅層性,3.基底層のみ,4.表皮陰性,5.毛嚢峡部内側性,6.外毛根鞘性,7.汗腺腺房性.B.上皮系腫瘍における発現パターンとその特徴:脂漏性角化症:3,ケラトアカントーマ:5,日光角化症:1,3(減弱)4(CK17 表層性),ボーエン病:1,2,4(CK8,19),基底細胞癌:1,2(角化部のみ),3,4(CK7,17),6,扁平上皮癌:1-3(分化の低下に伴い減弱),4(増強).【考察】正常皮膚および上皮系腫瘍において,特異的あるいは特徴的なCKサブタイプの発現パターンが明らかになった.診断や腫瘍細胞の分化方向の判断に有用であるとともに,悪性度の指標としても応用可能であると考えられた.
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