2001 Fiscal Year Annual Research Report
自律神経活動動態が基礎体温の周期変動及び月経前症候群の発現に及ぼす影響-心拍変動パワースペクトル解析による検討-
Project/Area Number |
13770212
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Shitennoji University Junior College |
Principal Investigator |
松本 珠希 四天王寺国際仏教大学短期大学部, 保健科, 助教授 (90248047)
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Keywords | 月経前症候群 / 自律神経活動 / 心拍変動パワースペクトル / 基礎体温 / 卵胞期 / 黄体期 / MDQ (Menstrual Distress Questionnaire) |
Research Abstract |
【目的】月経に伴う著明な随伴症状のひとつとして月経前症候群(Premenstrual syndrome : PMS)が挙げられる。PMSの症状は多種多様で、種類や程度を問わなければ70%以上の日本人女性に存在し、しかも年齢による発現様式も異なることが報告されている。PMSの病態に関しては未だ明らかにされていないが、PMSを伴う女性の愁訴には自律神経系の機能異常を疑わせる症状が多いことを考慮すると、相対的な自律神経活動の低下、あるいは、自律神経活動の周期変動の乱れがPMSを誘発する重要な要因である可能性が推察される。そこで本研究では、心拍変動パワースペクトル解析法(HRV)を用い、黄体後期における自律神経活動動態が体温・代謝調節機能及び身体的・精神的不快症状の発現に影響を及ぼすか否かを検討することを目的とした。【方法】本実験に参加した被験者は、内科的・婦人科的疾患を有していない正常月経周期をもつ健康な女性31名(20.2±0.1歳;BMI:20.1±0.2)であった。被験者は、起床時に床の中で舌下温を測定し、早朝第1尿を採取した後実験室に来室した。体重と体脂肪率を測定し、20分間座位安静を保持した後、胸部CM_5誘導の心電図を10分間連続測定した。測定は各被験者について、卵胞期と黄体期に各3回、午前8時から11時までの間の同一時間帯に行った。心電図測定後、Menstrual Distress Questionnaire (MDQ)に答えてもらった。自律神経活動動態の評価にはHRVを用い、交感・副交感神経活動及び交感神経系体温・熱産生調節に関与する周波数帯域をそれぞれ分離・定量化した。【結果】基礎体温及び尿中卵巣ホルモン値は、黄体期において有意に上昇した。自律神経活動動態に関しては、黄体期において、HRVのすべての周波数成分が顕著に低下した。MDQのスコアーは、黄体期において有意に高く、中でも痛み因子、自律神経反応因子、水分貯留因子、負の感情因子、抑制因子において高い値が認められた。 【考察】本研究結果から、PMSの発現に交感・副交感両自律神経活動の低下及び体温・熱産生調節機能の低下が密接に関与する可能性が示唆された。近年、女性の健康への関心が高まりつつあるが、我が国では、女性のヘルスケア対策が不十分であり、PMSに対する社会的な認識も低い状態にある。従って本研究結果が、PMS改善のための支援プログラムや女性のQuality of Lifeを高めることができる健康教育プログラムの考案・作成に役立ち、さらに「女性のための生理学研究」を発展・促進させる一助となるのではないかと推察された。
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