2002 Fiscal Year Annual Research Report
実験的自己免疫性心筋症における慢性心不全急性増悪因子の解明
Project/Area Number |
13770363
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
町田 陽二 北里大学, 医学部, 助手 (20265599)
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Keywords | 酸化ストレス / 慢性心不全 / 活性酸素種 / 炎症細胞 |
Research Abstract |
研究代表者の町田は平成13年度の実績をもとに、平成14年度には以下に示す実績を得た。これらの実績は、さらに残された課題を解決することで将来の臨床へ大きく還元され、慢性心不全に悩む患者への大きな福音を与えうると考えられる。 実績A:平成13年度に、心不全の形成にiNOSを介した過剰なNO産生が関与していることを証明した。本年度には実験的自己免疫性心筋症をもちいて活性酸素種の一つであるNOの産生源について検討した。本モデルのNOの産生源としてもっとも有力な候補は炎症細胞である。われわれは炎症細胞の種類について免疫染色法をもちいて検討した。慢性持続的に炎症が遷延し慢性心不全をきたすもでるとしてT細胞移注による実験的自己免疫性心筋症モデルを用いた。その結果、CD4陽性細胞とED1陽性細胞(マクロファージ)が多く認められる他にCD8陽性細胞も散見された。これらの細胞は心筋の炎症のピークと共に増加減少することが経時的な検索によって証明された(Takeuchi et al.,Circ J 67(suppl.I)370,2003)。この心筋症モデルラットは以前の報告から炎症細胞から大量のNOが産生されるという報告と合致する所見であり、炎症細胞そのものが心不全増悪因子に深く関与していることを示唆した。 実績B:平成13年度に、心不全をきたすモデルとしてのTNFa過剰発現マウスでは、代表的な活性酸素種であるハイドロキシラジカルの産生が亢進していることを報告した。そのマウスでは心筋に高度の炎症細胞浸潤が認められる。よって、その炎症細胞がハイドロキシラジカルの産生源としての役割を果たしている可能性がある。本年度には炎症細胞浸潤を抑制するためにサイクロフォスファマイドを皮下注射し、その7日後に心筋のハイドロキシラジカルの産生をESR法で測定した。その結果、炎症細胞浸潤は完全に抑制されたにもかかわらず、ハイドロキシラジカルの産生は低下しないことが示された(Machida et al.,Am J Physiol 284 H449-455,2003)。これらの結果から、活性酸素種の産生源は炎症浸潤細胞ではない可能性が示唆された。 今後の展望:本研究課題の平成13年度および14年度からの研究実績から、慢性心不全急性増悪因子について活性酸素種と炎症細胞に焦点を当てて検討した結果、何らかの形でこの三者がお互いに関与していることは判明した。しかし、残された課題として、活性酸素を制御したり、炎症細胞を抑制したりすることによって心不全の増悪が抑制されるか否かを検討する必要がある。その上で、心不全増悪因子の一つが判明すれば、臨床に貢献できる大きな成果が得られると期待される。
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