2002 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病モデル動物を用いた感受性遺伝子群の探索(QTL mapping、DNAマイクロアレイによる遺伝子発現およびプロテオーム解析による複合アプローチ)
Project/Area Number |
13770566
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中谷 紀章 理化学研究所, 分子精神科学研究チーム, 研究員 (30332323)
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Keywords | Animal model / Depression / Learned helplessness / Antidepressant / DNA microarray |
Research Abstract |
うつ病は遺伝的解析により単一遺伝子ではなく複数の遺伝子が関与していることが指摘されている。これまでうつ病にはモノアミン系薬剤による治療が行われてきているが、原因遺伝子同定には至っていない。我々はこの現状を考慮し、平成13年度からうつ病モデル動物である学習性無カラット(LHラット)を用いてDNA chipによるゲノムワイドな遺伝子解析を行った。LHラットでコントロール群に比べ変化しており、かつ選択的セロトニン取り込み阻害剤あるいは三環系抗うつ薬に反応する遺伝子をうつ病感受性遺伝子の指標として解析した。結果はLHラットでは受容体およびイオンチャンネルをコードする遺伝子群でコントロール群に比べ有意に減少しており、これら受容体およびイオンチャンネルを介する細胞内シグナル伝達が低下している可能性が示唆された。 平成14年度では13年度の既知遺伝子に加え、16000個の未知遺伝子(EST)をプローブとし、新規のうつ病感受性遺伝子および新規抗うつ薬の標的遺伝子の探索を目的とした。コントロール群に比べLHラットで有意に変化している遺伝子を抽出したところ、前頭葉では85個の遺伝子がコントロール群に比べLH-S群で有意に変化しており、約11%がイミプラミンとフルオキセチンのどちらかに反応を示した。これに対し、海馬では81個の遺伝子がコントロール群に比べLH-S群で有意に変化しており、約4%が両方の抗うつ薬に応答を示し、約17%がどちらかの抗うつ薬により発現レベルが有意にコントロールに近づいた。さらにこれらEST断片配列をデータベースによるホモロジー検索およびモチーフ検索を行うことにより、最終的に前頭葉で約63%、海馬で約54%の遺伝子の機能推定を行うことが出来た。前頭葉では酵素に分類される遺伝子、海馬ではそれに加え転写調節に関わる遺伝子が最も多かった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takeo Yoshikawa et al.: "Identification of Multiple Genetic Loci Linked to the Propensity for "Behavioral Despair" in Mice"Genome Research. 12. 357-366 (2002)
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[Publications] 吉川 武男 他: "気分障害(うつ病)の遺伝子基盤-動物モデルのQTL解析"Molecular Medicine. 40(in press). (2003)