2001 Fiscal Year Annual Research Report
肝硬変の肝部分切除による肝細胞増殖因子(HGF)の発現に関する研究
Project/Area Number |
13770723
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
海堀 昌樹 関西医科大学, 医学部, 助手 (30333199)
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Keywords | 細胞増殖因子 / 活性型HGF / 非活性型HGF / 肝硬変 / 肝切除 |
Research Abstract |
【目的】現在、本邦において肝細胞癌などの肝切除を行う場合、基礎疾患としてそのほとんどが慢性肝炎もしくは肝硬変を併存している。そこで今回我々は、肝硬変ラットを作製し、肝部分切除後の残存肝、血漿中のHGFの発現形態(proおよびmature type)およびHGFを活性化するHGF activatorの発現形態を検討した。 【方法】肝硬変ラットはdimethylnitrosamine (DNA)を連続週3回、4週腹腔内投与により作製した。線維化の程度によりfibrosisおよびcirrhosis groupの2群に分けた。肝硬変ラットに左外側葉切除を行い約40%肝部分切除とした。切除後24時間にセリンプロテアーゼ阻害剤存在下に血漿および残存肝組織を採取した。サンプルはSP-SepharoseカラムにてIIGFを濃縮抽出し、抗IIGF heavy chain抗体を用いてimmunoblottingにてproおよびmature HGFの発現を検討した。また血漿サンプルを抗HGF activator抗体を用いて同様にproおよびmature HGF activatorの発現を検討した。 【結果】DMN誘発肝硬変ラットでは肝内にpro HGFが存在しており、線維化の進展により、さらにpro HGFが増加した。肝硬変ラットに肝部分切除を行い、24時間後に残存肝内のHGFを検討するに、fibrosis groupにおいてpro HFGがさらに増加し、mature HGFも認められた。血漿中HGFにおいてもproおよびmature typeが認められた。しかしcirrhosis groupにおいては残存肝内にpro HGFが認められるのみであり、肝内および血漿中ともmature HGFは認められなかった。血漿中HGF activatorは肝部分切除の有無に関わらず、pro typeのみ認められた。 【考察】肝硬変ラットでは、その肝内にpro HGFのみ存在しており、線維化が進展してもHGFの活性化は認められず、pro typeのみが増加した。しかし肝硬変ラットの肝部分切除後ではfibrosis groupにおいてのみmature HGFが認められた。cirrhosis groupにはmature HGFは認められなかった。これらのことにより軽度肝硬変の肝部分切除後には我々の実験系では検出できなかったが、少量のHGF activatorが活性化することにより残肝内のHGFが活性化し、これが障害肝における再生に関与しているのではないかと考えられた。また高度肝硬変に対し肝部分切除術を負荷することは、その残存肝は形態的および機能的にさらに障害されることとなり、その結果HGF activatorが活性化されず、HGFも非活性型のままではないかと考えられた。
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