2001 Fiscal Year Annual Research Report
脳低温療法施行患者の神経内分泌免疫学からみた宿主免疫応答と易感染性の基礎病態
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13770860
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
雅楽川 聡 日本大学, 医学部, 助手 (70328730)
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Keywords | 重症脳損傷 / 脳低温療法 / 感染症 / 神経内分泌免疫系 / リンパ球 / 単球 / ホルモン |
Research Abstract |
【目的】脳損傷とともに低体温暴露という特殊な生体侵襲の被った患者の宿主免疫応答の基礎病態を神経、内分泌、免疫系のクロストークの観点から検索し、宿主免疫賦活の治療戦略立案に向けた問題点の抽出を行う。 【対象および検索内容】来院時GCS8点以下の重症脳損傷患者で内頚静脈血血液温度を33-34℃の脳低温療法を導入した12症例を対象とした。冷却導入期、冷却期、復温終了時の3ポイントについて、以下の項目を検索する。(A)神経・内分泌系;カテコラミン3分画、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、コルチゾール、バソプレッシン(ADH)の血中濃度の測定。(B)免疫系;白血球分画、リンパ球Th-1/Th-2および単球HLA-DRの算定。 【結果・考察】冷却導入期の神経内分泌ホルモンはすべて基準値の5-10倍と高値であった。冷却期にはノルアドレナリン、コルチゾールの持続高値、GH、PRLの有意な減少を認めた。また冷却期にはリンパ球Th-1/Th-2比の減少と単球HLA-DRの低下を認めた。生体は向炎症反応から抗炎症反応へとパラダイムシフトを呈し、この際侵入微生物に対する宿主免疫応答の低下から感染症が発病すると推察される。復温期になると緑膿菌、黄色ブドウ球菌、真菌が喀痰培養より検出された。復温終了時に重症肺感染症を呈している症例は全身性の炎症反応を示しても末梢リンパ球Th-1/Th-2比と単球HLA-DRの低下が持続しており、宿主免疫応答の機能不全が存在すると考えられた。この際コルチゾールの高値、GH、PRLの低値が持続しており、内分泌系が免疫系を修飾している可能性が示唆された。 【結語】脳低温療法中の神経内分泌免疫系は向炎症反応から抗炎症反応へとパラダイムシフトを呈しており、易感染の病態が形成されると考えられた。
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