Research Abstract |
今年度は前年に引き続き、正常歯胚組織の発育過程におけるin vivoでの基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカン(HSPG)の局在を明らかにする目的で,各歯胚発育段階のマウス下顎第一臼歯歯胚(胎生11,13,15,17日齢,生後1,6,10,12,28日齢)について,パラフィン連続切片をもちいて,HSPGコア蛋白質の局在およびHSPG遺伝子発現を免疫組織化学的およびin-situハイブリダイゼーション法にて検索した。その結果,HSPGコア蛋白質は,エナメル器および歯乳頭組織に局在し,とくに,エナメル髄星状網細胞の細胞間隙にきわめて豊富であった。鐘状期歯胚では,エナメル基質形成開始期に限局して,内エナメル芽細胞の細胞基底側および側面の細胞間隙にHSPG免疫陽性の小胞状拡張が出現し,周囲の内エナメル髄細胞にHSPG遺伝子発現がみられた。同時に,象牙芽細胞にもHSPG遺伝子発現が強く認められた。したがって,HSPGがそれらの細胞分化あるいはエナメル髄内の拡散による物質輸送の担体としてエナメル質・象牙質基質合成に関与している可能性が示唆された(裏面研究発表2-4)。 また,歯胚組織由来とされるエナメル上皮腫においても,エナメル髄様の腫瘍胞巣内にHSPGが特異的高濃度に局在するとともに,腫瘍胞巣浸潤先端部でとくに遺伝子発現が強調されたので,上皮性腫瘍細胞の増殖や浸潤を制御している可能性が示唆された(研究発表1)。 ついで,歯胚の各構成細胞でのHSPGコア蛋白質の生合成を確認する目的で,歯小嚢・歯乳頭・エナメル髄細胞の初代培養システムを確立し,蛍光抗体法および免疫沈降法,さらにRT-PCR法によって検討したところ,すべての細胞種においてHSPGの蛋白質およびmRNAレベルでの発現が確認された(研究発表4)。 最後にHSPGの関与する歯胚発育障害機構を解明する目的で,アンチセンスHSPGオリゴヌクレオチド添加・非添加下にて歯胚器官培養をおこなった。アンチセンス添加群の培養歯胚紐織では,エナメル器の発育および象牙芽細胞分化が不良であることが確認されており,HSPGがエナメル芽細胞および象牙芽細胞分化に重要な役割をはたしていることがin vitroでも明らかになった。
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