2001 Fiscal Year Annual Research Report
Nd:YAGレーザーによる軟化象牙質の選択的除去に関する研究
Project/Area Number |
13771141
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
勝呂 尚 日本大学, 歯学部, 助手 (90318452)
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Keywords | Nd : YAGレーザー / 着色剤 / 選択的除去 / 蒸散深度 / 定量分析 |
Research Abstract |
近年の齲蝕治療では、病的歯質のみを選択的に除去する方法が最善の治療法として注目され、従来のBlackによって構築された窩洞の保持形態や予防拡大などを基本とする歯科治療に大きな変革期をもたらしている。このため齲蝕検知液の開発や各種切削法が思案されているが、この目的に添った治療法の確立はまだされていない。各種切削法の一つであるレーザーは、比較的早くから試用され、なかでもNd:YAGレーザーは、近赤外領域に波長を持つことから特定の色調に選択的に吸収されることが知られている。 申請者は、その性質を利用し、軟化象牙質の除去にNd:YAGレーザーと着色剤を併用して齲蝕病巣の蒸散量を検討し、黒色系色素に優れた蒸散効果があることおよびそれらの着色剤について光透過性を測定し軟化象牙質の蒸散量と光透過性との関係になどについて報告している。本年度は、軟化象牙質の選択的除去法の基礎的研究として脱灰象牙質と健康象牙質の2層を有する試料を作製し、照射後の象牙質の選択的除去効果、照射後の象牙質表面性状の観察、象牙質面定量分析などの研究を行い、以下の結論を得た。 1.蒸散深度は、照射出力が増加するにしたがい、蒸散深度の増加が認められた。 2.健康象牙質では、各着色剤とも蒸散深度が認められ、フッ化ジアンミン銀の蒸散深度が高く、次いで黒色剤、非着色剤、HYCの順であった。 3.脱灰象牙質では、フッ化ジアンミン銀の蒸散深度が高く、次いで黒色剤、HYCで、非着色剤では蒸散深度がほとんど認められなかった。 4.健康象牙質、脱灰象牙質では、健康象牙質の方が各条件群において高い蒸散深度を示した。 5.SEMによる観察では、蒸散効果が得られた窩底部においては、象牙質の亀裂および溶岩状構造が観察された。 6.照射後の定量分析では、健康象牙質のCa、Pの定量(wt%)に比較して、フッ化ジアンミン銀のCa、Pの定量(wt%)の方が高い値を示した。 今回使用したレーザー照射は、高出力であり、これまで難しいとされていたNd:YAGレーザーに有効である健康な象牙質蒸散が可能であることが示されたが、選択的に軟化象式質の蒸散には、申請者のこれまでの成績を併せると照射出力を下げて行う必要があると考えられた。
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