2001 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素分解酵素の細胞選択的ターゲティングによる癌転移抑制
Project/Area Number |
13771440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西川 元也 京都大学, 薬学研究科, 助手 (40273437)
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Keywords | 癌転移 / 活性酸素分解酵素 / カタラーゼ / SOD / レセプター介在性エンドサイトーシス / 体内動態 / MMP / 化学修飾 |
Research Abstract |
近年、癌転移の転移・浸潤過程に各種活性酸素が複雑に関与することが明らかとされ、低レベルの活性酸素が癌細胞の転移を亢進されることが報告されている。そこで、過酸化水素を効率よく消去するカタラーゼ(CAT)を癌細胞の転移臓器へ選択的に送達することによる癌転移抑制を試みた。まず、CATの体内動態を制御するために、ガラクトース修飾(Gal-、肝細胞ターゲティング型)、マンノース修飾(Man-、肝非実質細胞ターゲティング型)、サクシニル化修飾(Suc-、肝非実質細胞ターゲティング型)、ポリエチレングリコール修飾(PEG-、血中滞留型)を施した。マウス大腸癌細胞colon26細胞を門脈から投与することにより作成した肝転移モデルマウスに対し、3日目に各カタラーゼ誘導体を35000units/kgの投与量で尾静脈内投与した。効果の判定は癌細胞投与後2週間後に肝臓を摘出し、臓器表面の癌結節数を測定することにより行った。その結果、いずれのCAT誘導体投与によっても肝臓の癌結節数は有意に低下した。中でも、肝細胞ターゲティング型であるGal-CAT投与による効果が最も強く、未修飾CATよりも有意に結節数を低下させた。一方、癌細胞の静脈内投与により作成した肺転移モデルにおいては、肝臓へのターゲティング型と比較して血中滞留型のPEG-CATがより有効であった。また、CATを皮下に投与した場合も顕著に肺への転移が抑制された。^<111>Inで放射標識したCAT誘導体を用いて体内動態を検討した結果、肺への転移に関しては血中滞留性の増大が効果的な抑制に有効であることが示唆された。不活化したCATでは全く抑制効果は認められず、癌転移数の減少はCATの酵素活性に起因するものと考えられた。癌細胞の培養上清にはゼラチナーゼ活性を有するタンパク質の存在が認められ、その活性は細胞をCAT処理することにより低下し、一方過酸化水素処理により増加する傾向が認められた。以上の結果から、colon26細胞の肝臓および肺への転移は過酸化水素により亢進されること、転移する癌細胞の近傍にCATをターゲティングすることにより効率よく転移を抑制可能であることが示された。また、その効果の一部にはCATによるタンパク質分解酵素の発現レベルの低下が関与することも示唆された。今後は、活性酸素分解カスケードの上流に位置するスーパーオキサイドディスムターゼによる影響について検討し、活性酸素分解酵素のターゲテイングによる癌転移抑制法の確立を目指す。
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[Publications] Y.Yabe et al.: "Prevention of neutrophil-mediated hepatic ischemia/reperfusion injury by superoxide dismutase and catalase derivatives"J. Pharmacol. Exp. Ther.. 298(3). 894-899 (2001)
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[Publications] M.Nishikawa et al.: "Inhibition of experimental pulmonary metastasis by controlling biodistribution of catalase in mice"Int. J. Cancer. (in press).