2001 Fiscal Year Annual Research Report
身体の柔軟性に関する研究―筋・腱特性の実測からのアプローチ
Project/Area Number |
13780013
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川上 泰雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60234027)
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Keywords | 柔軟性 / 筋・腱特性 / 足関節 / 超音波法 / 性差 |
Research Abstract |
本年度は、柔軟性を決定する要因を筋腱複合体の特性の点から検討した。被験者は健常な男女大学生22名(男性8名,女性14名)であった.被験者は座位(膝関節は完全伸展位)をとり、足部を特別に作製した筋力計のフットプレートに固定した。フットプレートは等速(100°/秒)で底屈30°の位置を始点として足背屈方向に回転し、一定の受動トルク(35Nm)が生じたときに回転を停止、その時の足関節角度を計測できるように設計されていた。受動トルクと関節角度の関係を2次曲線で回帰し、回帰係数(Kpas)をもって関節の柔軟性を定量化した。Bモード超音波装置を用いて腓腹筋の組織縦断画像を撮像し、背屈動作時の筋腱移行部の動きから、筋線維およびアキレス腱(腓腹筋の外部腱)の伸張量を求めた。さらに、最大随意等尺性足底屈中のトルク、腱組織伸張量、および安静時アキレス腱長から、アキレス腱のコンプライアンスを推定した(アキレス腱コンプライアンス指標=[アキレス腱伸張量/安静時アキレス腱長]/足底屈トルク)。受動的足背屈時の足関節角度は15〜59°と大きな個人差が認められ、最大随意足底屈トルクと負の相関関係が認められた。Kpasは受動的足背屈角度と高い相関を示し、Kpasの柔軟性の指標としての有効性が示された。Kpasとこのときの筋線維伸張量との間には負の相関がみられた。しかし、その相関はKpasとこのときのアキレス腱伸張率との関係ほど高くはなく、また、Kpasとアキレス腱コンプライアンス指標との間にも負の相関関係がみられた。Kpasやアキレス腱コンプライアンス指標、受動足背屈中の筋線維伸張率及びアキレス腱伸張率には有意な男女差が認められた(男<女)。本研究の結果、足関節の柔軟性(角度-受動トルク関係の傾き)は筋線維よりも腱組織の伸展性が影響を及ぼすことが明らかになった。柔軟性の男女差は筋力(筋量)の違いに加えて、筋腱複合体の伸展性の男女差が影響していることが示唆された。
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