2001 Fiscal Year Annual Research Report
ササ分布の時空間変動に着目した植生動態モデルの構築
Project/Area Number |
13780069
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 助教授 (90260786)
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Keywords | 林床植生 / 年輪解析 / 地表撹乱 / 沖積錐 / ササ |
Research Abstract |
森林内においては、林床にササの優占度が非常に高いところと、ほとんどササの存在しないところが存在する。本研究では地表撹乱を受けてからの時間の長さに着目して、林床型の場所的な違いが生じる原因を検討した。 梓川上流域に発達する沖積錐上において41地点の調査区を設け、植生調査を実施した。沖積錐は土石流の堆積によって形成された地形であるから、様々な時代の堆積面がモザイク状に分布している。調査区のうち年輪試料を得た林分では、林冠構成木の年輪数から林齢を推定した。また年輪試料のない調査区では、他の調査区の年輪データから求めたダケカンバの樹齢-胸高直径の関係式を用いて、ダケカンバの最大胸高直径から林齢を推定した。 このようにして推定された林齢と林床におけるシナノザサの植被率との関係を見ると、土石流などによる撹乱をうけてから約50年間はササの植被率は0%であった。その後50年から100年にかけてササの優占度が増大し、100年を超えると80%以上の植被率になっていた。 しかし50年から200年の間で、ササの植被率が0〜5%の林分も存在しており、これらの林分では、林床に土砂が流入するなどして、ササの侵入が遅れているとも考えられる。そのような林床撹乱の有無と発生時期を年輪幅の経年変化パターンの特徴から推定した。その結果、林齢が100年を超えるにもかかわらずササの植被率が小さな林分では、過去50年間前後に林床撹乱が生じている可能性が示唆された。 以上の結果から、沖積錐上では基本的には時間軸に沿ってササの植被率が増大し、撹乱を受けてから約50年間はササの植被率が小さくおさえられていると推測される。 なお、植生図および地表動態履歴図は作成途中にあり、来年度に調査を補って完成させる。
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