2001 Fiscal Year Annual Research Report
数学的一般化の過程における社会的相互作用に関する分析
Project/Area Number |
13780145
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
山口 武志 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (60239895)
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Keywords | 算数・数学教育 / 一般化 / 一般化分岐モデル / 分数の除数 / 小数の除数 |
Research Abstract |
本年度は,下記の3点に関する研究を行った。 1.本研究における「一般化」の理論的枠組みについては,オーストリアの数学教育研究者であるDorflerの一般化モデルを参考にしている。本年度は,平成10・11年度の奨励研究(A)の研究成果を発展させながら,「Dorflerに基づく一般化分岐モデル」の精緻化を図った。具体的には,創造工学の創始者であるGordonの知見を援用しながら,一般化には「外延的一般化」と「内包的一般化」という2つの異なる過程があることを理論化した。 2.「Dorflerに基づく一般化分岐モデル」に基づいて,「分数でわるわり算」と「小数でわるわり算」の理解過程を比較検討した。双方のわり算に関する実態調査も実施した上で,「分数でわるわり算」に関する立式の達成度が「小数でわるわり算」のそれよりも極端に低い原因として,両者の一般化の質的差違があげられることを指摘した。なお,この研究成果については,日本数学教育学会・第34回数学教育論文発表会において,「Dorflerに基づく一般化分岐モデルによる「÷分数」の意味理解に関する質的考察」と題する論文として報告している。 3.Dorflerも指摘するように,数学的一般化に果たす「記号」の役割はきわめて大きい。氏のモデルにおいても,それは「記号の対象化」として具体化されている。一方,近年の構成主義,相互作用主義,社会文化主義に基づく研究では,社会的相互作用によって展開される学習過程を「記号化」の過程として分析する研究が活発に行われている。本年度の研究では,Cobbらの研究を整理しながら,数学的意味の「創発(emergence)」に果たす数学的表記の役割を考察した。
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Research Products
(1 results)