2001 Fiscal Year Annual Research Report
外国人児童・生徒の認知能力活性化による文法理解促進に関する研究
Project/Area Number |
13780163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
宇都宮 裕章 静岡大学, 教育学部, 助教授 (30276191)
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Keywords | 認知言語学 / イメージスキーマ / 文法理解 / 外国人児童生徒 / アスペクト / 日本語教育 |
Research Abstract |
本研究は認知能力と文法理解との関連性の解明が中心課題の一つとなっているが、本年度ではその関連性に関して次のような新たな知見が得られた。ある状況を捉えて言語化する場合、その状況に時間的な流れを把握すると必ず動詞を中心とした表現の使用を試みる。これは日本語母語話者・日本語学習者の別なく共通することが明らかになった。さらに、母語の習得が完成されていれば、成人・子供といった年齢的な差もほとんどない。このことは時間を含む事象(出来事)の捉え方に対して、人間としての普遍的な認知の存在(「イベント・イメージスキーマ」の存在)を強く示唆するものである。今後の展開に向けて応用をより確実なものとするために、理論的な記述の精緻化も行った。その結果、スキーマ構築では、これまで取り上げられて北「図と地」「時間と空間」「階層」の認知に加えて「変化」と「不変化」の認知がその根本にあることが分かった。4つの基本的な認知項目が調和して、出来事に対する捉えかたのタイプが決定する。これを「金型」として我々は出来事を捉える。そのため言語化の段階では様々な表現となって発話されていても、基本的には時間(アスペクト)によって表現の分類が可能になる。 スキーマの認知を応用した文法理解促進への試みは来年度以降の課題であるが、次の項目は現段階でほぼ確実視されている応用項目である。 1、一語文から二語文への展開の難点がよく指摘されるが、敢えて分析的に教授を行うとかえって混乱する。 2、入力項目が複雑でも、1単位(ユニット)認知ができれば言語としての表現が容易になる。 3、「ものの名前(名詞)」「動きの様子(動詞)」といった分析的な区分ができるのは学力的な能力が向上した後である。したがって、語彙に対して文法的区分を付けて教えるより、スキーマを活性化させて一まとまりにして提示する方が習得が早い。
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