2001 Fiscal Year Annual Research Report
専門用語を構成する一般語の語彙体系に関する認知的な研究-文科系科目専門用語を中心に-
Project/Area Number |
13780165
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中田 一志 大阪外国語大学, 留学生日本語教育センター, 助教授 (90252741)
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Keywords | 専門用語 / 証券用語 / 語構成 / 学術用語 / 認知科学 |
Research Abstract |
本研究の目的は文科系の分野の専門用語の語彙体系を解くことである。本年度実施したことは用語集と研究にかかわる研究書の収集とケーススタディとしての証券用語の語構成に関する研究である。研究の目的は二つある。一つはもちろん証券用語の分析で,もう一つは専門用語の定義である。まず証券用語の中から動詞的な要素を持つ用語を抜き出し,どの動詞が証券用語を構成するのによく使われているかを調査した。その結果,この分野では構成力の高い動詞は「売る」「買う」であった。つぎに証券用語の中でこの二つの動詞の何れかを複合動詞またはその名詞形に持つ用語を言語学的観点から二通りの方向から分析した。一つは複合語を構成する第一動詞と第二動詞の項関係である。もう一つは第一動詞と第二動詞の構造的な関係である。項関係について:一般に用いられる用語は語構成を支えるための項の共有が必須であるが,証券用語では語構成を支えるために項の共有は必ずしも起こらなくてもよい。ただし,第一動詞と第二動詞の項がその証券取引で密接に関係するものでなければならない。例えば第一動詞と第二動詞が(株,株価)、(株,市場)、(株,資金)、(株価,株)、(株数,株)、(利益,株)、(債権,株)のときに複合語が構成される。もう一つの構造的な関係について:一般に用いられる用語の第一動詞と第二動詞の関係は限定的だが,証券用語のそれは広範囲に広がる。一般用語には珍しい第一動詞が副詞節(時間・目的・理由・手段を表すテ形)相当の動詞であったり,主語位置に位置する用語があったりする。つまり構造的には一般語に比べると語構成の種類が豊富である。それは証券取引の常識によって語構成を支えることができるからである。専門用語はその分野での使用頻度が大きな指標になるが,その他にその分野の常識によって言語学的に形成されるか否かというのも一つの指標になるだろう。これが専門用語の定義への還元である。
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Research Products
(1 results)