Research Abstract |
移動体のみで構成されるアドホックネットワークでは,移動体の移動に伴い,ネットワークの分断が頻繁に発生するため,通常の固定ネットワークに比べてデータアクセスの成功率が低くなる.本研究では,アドホックネットワークにおいて,データ複製を効果的に配置することでネットワーク分断時のアクセス成功率の低下を防ぐことを目的とする. 2年計画の本研究の初年度となる今年度は,まず,データの更新が発生しない単純なアドホックネットワークを想定して,データアクセスの成功率を向上するための三つのデータ複製配置方式を考案した.考案した三方式の性能評価をシミュレーション実験によって行った.その結果から,各移動体の各データに対するアクセス頻度と,ネットワーク全体のトポロジを考慮する方式が,アクセス成功率を最も高くすることが分かった.一方,各移動体が自身のアクセス頻度のみに基づいて複製を配置する方式は,アクセス成功率は高くないが,複製配置のためのトラヒックが小さいことを確認した.実環境では,要求されるシステム性能や,システムの特徴を考慮して,考案した三方式のうちで適するものを選択する必要がある. さらに,データ更新が周期的に発生する環境を想定して,上記の考案方式を拡張した.具体的には,複製配置を行う指標として,各データが次に更新されるまでの時間を導入した.したがって,複製配置の際に,もうすぐ更新が発生し,複製が無効となるようなデータの優先度が低くするため,無駄なトラヒックの低減やアクセス成功率の向上が期待できる.シミュレーション実験による性能評価の結果から,拡張方式の有効性を確認した.また,周期的なデータ更新が,厳密な周期では発生せず,ずれが存在する環境を想定して,拡張方式の技術課題について検討した. これらの考案方式を実環境上で運用評価するために,プロトタイプシステムの設計を開始した.
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