2002 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖構造解析による人工化学物質の生体影響評価法の開発
Project/Area Number |
13780436
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Research Institution | Osaka Women's University |
Principal Investigator |
牧野 泰士 大阪女子大学, 理学部, 助手 (70332955)
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Keywords | N-glycan / pyridylamination |
Research Abstract |
蛋白質・核酸・糖は生体を構成する基本的な有機分子である。生体の状態(環境)が変化した時、蛋白質と核酸に量的変化は見られることがあるものの質的変化(構造の変化)は決して無い。ところが、糖は量的にも質的にも敏感に変化することが明らかにされつつある。そこで私は人工化学物質による環境汚染に対しても糖鎖構造に変化が現れるのではないかと考えた。本研究は、人工化学物質が糖蛋白質糖鎖構造に及ぼす影響を調べ、糖鎖構造解析による環境リスク初期評価が可能かどうか検討を行うことを目的とした。 まず、飼育水を満たしたガラス容器中へ受精直後のヒメダカの卵を移し、26℃に保った。飼育水は、コントロールの他、10mg/lと100mg/lのビスフェノールAを含むものを用意した。受精後72時間が経過しても成長が確認できない(眼が形成されない)卵は、未受精卵として除去した。発眼期および孵化直前・孵化直後に一定数ずつ取り出し、それぞれを凍結乾燥した。粉砕した後、ヒドラジン分解によってN-配糖体糖鎖を切り出し、還元末端を2-アミノピリジンで蛍光標識した。得られた蛍光標識化糖鎖は、サイズ分画高速液体クロマトグラフィーで分画した後、逆相高速液体クロマトグラフィーで分析した。 その結果、発生の過程で溶出パターンに変化が見られたものの、ビスフェノールAを加えたことによる溶出パターンの有意義な変化は見られなかった。実験で用いたビスフェノールAの濃度は海水や河川水で検出されている濃度の10〜100倍であるが、この程度の濃度では発生段階のヒメダカの糖鎖構造に有意義な変化は見られないことがわかった。
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