2001 Fiscal Year Annual Research Report
細菌におけるtrans-translationの生理的意義
Project/Area Number |
13780552
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿保 達彦 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90303601)
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Keywords | trans-translation / 細菌 / 遺伝子発現制御 / 翻訳 / リボソーム / RNA / プロテアーゼ / 終止コドン |
Research Abstract |
細菌のtrans-translationは、終止コドンを持たないmRNAの3'末端まで到達してストールしたリボソームにSsrA RNAが作用して、翻訳産物のC末端に分解タグと呼ばれるペプチド配列を付加する現象である。分解タグをC末端に持つポリペプチドはC1pXP等のプロテアーゼによって速やかに分解される。SsrA RNAに塩基置換を導入し、プロテアーゼ耐性のタグを付加できるようになったSsrA-DDを用いると、trans-translation産物が安定に存在し、タグ特異的な抗体によって検出可能であるため、これを利用して解析を行なっている。 終止コドンを持たないmRNAが出来る状況の一つに、終止コドンの読み飛ばしが考えられる。実際に、終止コドンをセンスコドンとして認識してしまうsuppressor tRNA存在下では、翻訳が終止コドンを読みとばして、リボソームがmRNAの3'末端に到達してしまい、trans-translationが引き起こされることを大腸菌crp遺伝子を用いたモデル系で証明した。また、大腸菌を通常の条件下で生育させると多数のtrans-translation産物が生じるが、suppressor tRNAを保持する大腸菌ではそのtrans-translation産物が種類、絶対量ともに増えることが観察された。これらの結果から、終止コドンの読み飛ばしがtrans-translationを引き起こすことが示され、trans-translationが終止コドンの読み飛ばしによって生じるリボソームのストールの解消や異常タンパク質の分解除去に働いていると考えられた。
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