2002 Fiscal Year Annual Research Report
クローンマウスの作出効率に及ぼすES細胞の分化度の影響
Project/Area Number |
13780663
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
下澤 律浩 財団法人実験動物中央研究所, 生殖研究室, 研究員 (50300786)
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Keywords | クローンマウス / ES細胞 / キメラマウス / C57BL / 6J |
Research Abstract |
ES細胞をドナー核としたクローンマウス作出の可否とそれらES細胞のキメラマウスの生殖系列への寄与との相関を明らかにする目的で、近郊系C57BL/6J(B6J)マウスから樹立したES様細胞からクローンマウスの作出を検討するとともにその細胞が生殖細胞への分化能を有するかを検討した。クローンマウスの作出は、先の報告と同様に、ES様細胞を単独で培養し、M期に細胞周期を同調したものを除核未受精卵に導入してクローンマウスの作出を行った。また、これと平行してフィーダー細胞上でES様細胞を培養し、ホスト胚であるICRの胚盤胞に注入しキメラマウスの作出を行った。今回用いた6株のES細胞は形態的に若干の差があるものの、AP染色によって全株で未分化状態を維持していることが確認された。また、正常核型の割合は、20-90%の幅にあった。 クローンマウスの作出では、6株のES様細胞から構築した胚の桑実胚/胚盤胞への発生率は43.6%(175/401)であり、株ごとの差はあまり見られなかった。胚移植の結果、クローン個体を得ることはできていないが、26.7%(46/172)が着床しており、その内2株から計7つの胎盤のみの形成が確認された。また、キメラの作出については、6株全てからキメラマウスが得られているが、そのキメリズムには10-95%の幅があり、交配試験により2株で生殖細胞への分化が確認された。 本研究に用いたES細胞は全株とも比較的形態的な未分化度が維持されていたが、キメラマウスにおける生殖細胞への分化が確認された2株ですらクローンマウスの作出には到らなかった。しかし、胎盤が得られた2株の形態および正常核型の割合は、他のものと比べ比較的高いものであった。このことから、個体の形成には、未分化および正常核型の安定した維持が必要であると考えられた。
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