Research Abstract |
本研究は,聴覚障害者に対して周囲環境音を皮膚振動のパターンにより伝達し,その振動パターンから周囲環境を認知し,さらには音楽や雰囲気を楽しむことのできるシステムの実現を目的とする.そして,振動刺激による環境音の提示とその感性的な効果を明らかにし,触覚を利用した聴覚障害者の支援技術およびユーザの快適性向上技術を提案するものである. 平成13年度は,特に室内環境音の伝達に着目し,音楽の振動による伝達,およびテレビの台詞とBGM等の効果音を振動により伝達することの感性的な効果等を明らかにした. 具体的な実施項目は以下のとおりである. (1)実験に先立ち,149個の形容詞対に対して因子分析を施し,実験に使用する10個の感性語を選定した. (使用機器:パーソナルコンピュータ) (2)音を入力とし,その曲調や音の強さ,周波数成分に応じて,腕や頭に取り付けた振動モータを様々なパターンで振動させる環境音情報提示装置を構築した.また,携帯型の環境音情報提示装置も構築した. (使用機器:マイコン) (3)様々な振動パターンに対する面白さや快適さ等の感性をアンケートにより評価した.これにより,振動パターンと感性との関係を明確にした. (使用機器:パーソナルコンピュータ) (4)様々なジャンルの音楽を振動により伝達する場合の感性をアンケートにより評価した. (5)物語映像に対し,音を字幕や振動により伝達する場合の感性,理解度等を評価した. (使用機器:TVコンバータ,パーソナルコンピュータ) (6)聴覚に障害のある数名に提案装置を使っていただき,環境音伝達特性等を感性的な面から評価した. 本研究で得られた成果は,11.に示す講演会にて発表した.そして,「振動モータを用いた音楽情報伝達の検討」の発表に対しては,電子情報通信学会九州支部より講演奨励賞をいただいた. 現在,立体映像を提示し,臨場感や現実感等の感性を評価する環境を構築した(使用機器:バーチャルリアリティーディスプレイモニター,3Dモジュレータパック,液晶プロジェクタ偏向レンズ,パーソナルコンピュータ).また,脳波や脈波等の生体信号を利用した評価も始めている.平成14年度は,これらの検討を重点的に行う予定である.
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