2001 Fiscal Year Annual Research Report
粘菌における迷路解法と細胞システム構築の動的メカニズム
Project/Area Number |
13831001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中垣 俊之 北海道大学, 電子科学研究所, 助教授 (70300887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 哲男 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (20113524)
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Keywords | 粘菌 / 細胞計算 / 迷路 / 自己組織化 / アメーバ運動 / 最適化 / 生物リズム |
Research Abstract |
単細胞生物である粘菌モジホコリの変形体が、収縮リズムのパタン形成に基づき巨大アメーバ様システムを最適化し、高い計算能力を発揮することを実験的に示した。 寒天ゲル上を広がる変形体の両端にそれぞれ餌を与えると、変形体の大部分が餌に群がって養分を吸収する一方でたった一本の太い管が二つの餌の間をほぼ最短な経路で結ぶように形成された。管内の流量は、ポアズイユ流の近似の下で管の太さの4乗に比例し長さの1乗に反比例するので、太くて短い管は流動効率が高い。粘菌は、このような形によって、餌の吸収と原形質の交換効率をほぼ最適化した。この最適化機能は、さらに複雑な状況でも発揮された。迷路いっぱいに広がった粘菌に対し二つの出口に餌を与えると、最短経路にだけ一本の太い管が現れた。粘菌が迷路を解く計算能力を持つ事が明らかになり、細胞レベルでの高い情報処理能力が世界に先駆けて証明された。 与える餌の数(3,4,6,7,12,24,49,144個)と配置を様々に変えると、それに応じて餌場所を繋ぐ太い管のネットワークの形も劇的に変わった。これらのネットワークは、効果的な輸送ネットワークの持つべき幾つかの基準を満たした。すなわち、管の総長の短さ、餌場所間の密な繋がり、事故による管の断線に対する耐久性は、いずれも良い値を示した。このような複雑な状況での最適化アルゴリズムは現代科学技術の困難な問題であるが、単細胞の粘菌は予想以上に高い計算能力を有することが解明された。 粘菌の計算アルゴリズムを解明するために、管の形成機構を収縮リズムの観点から調べた。二つの部分で反位相の振動状態が続くとその間に管が形成される事がわかった。収縮リズムのパターン形成は、原形質流動を媒体にして管形態形成と相互作用した。このようなパターン形成の機構が、粘菌の計算アルゴリズムの鍵であると予想された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Nakagaki: "Path finding by tube morphogenesis in an amoeboid organism"Biophys.Chem.. 92. 47-52 (2001)
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[Publications] A.Takamatsu: "Spatiotemporal symmetry in rings of coupled biological oscillators of Physarum plasmodial slime mold"Phys.Rev.Lett. 87. 078102-1-078102-4 (2001)
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[Publications] T.Nakagaki: "Smart behavior of true slime mold in labyrinth"Res.in Microbiol.. 152. 767-770 (2001)
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[Publications] 中垣俊之: "迷路を解く単細胞生物"遺伝. 55・3. 23-25 (2001)
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[Publications] 中垣俊之: "迷路を解く巨大アメーバ細胞:粘菌"生物物理. 41. 244-246 (2001)
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[Publications] 中垣俊之: "生物選考課程に数理生理学を"数学の楽しみ. 30(印刷中). (2002)