2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13837021
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Research Institution | Hiroshima Prefectural College of Health and Welfare |
Principal Investigator |
鈴井 江三子 広島県立保健福祉大学, 看護学科, 助教授 (20289218)
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Keywords | 妊娠検診 / 超音波診断 / 胎児画像 / 妊婦の視覚 / 妊婦の知覚 / 身体感覚 / 妊婦の意識 / 医療テクノロジー |
Research Abstract |
本研究では、妊婦の意識に影響を与える妊婦健診-とくに、超音波診断の導入を中心に-に焦点を当て、女性が妊娠期間を過ごす妊婦健診のあり方を再考するものである。そのため超音波診断を含む妊婦健診と、超音波診断を含まない妊婦健診の2場面の参与観察を通して、超音波診断と妊婦健診に対する意識を比較分析した。また、2場面における全24事例の妊婦を対象に、妊婦健診の診察方法と、妊婦の妊娠観及び身体感覚の関係性を比較分析し、妊婦の意識に影響を与える要因を究明した。 その結果、超音波診断と妊婦との関係は、第1に、ほとんどの妊婦は超音波診断を受けて画像を見ることにより、肯定的な感情を促されていた。ただし、その一方では超音波診断に対する否定的な感情もみられた。また、画像の実態と、画像に対する妊婦の意識を比較、分析した結果、1)妊婦の画像に対する視覚と認知の整合性は見られず、画像に対する妊婦の視覚は不明瞭なものであった。すなわち、妊婦の画像に対する「赤ちゃんが見えた」という認知は、「診察者の説明」「イメージ」「妊婦の既得知識」にくわえて、「妊婦診察という文脈効果」によるものであった。3)一方、超音波診断による妊婦の視覚を刺激した胎児の存在確認は、見えないと不安になる感情を生起していた。すなわち、「胎児画像の存在」と「診察者による胎児の生育を保障する発言」によって生じた安心感は、それらが存在しないと不安になる表裏一体のものであった。その結果、妊婦の<胎児画像が見たい>という欲求がさらに強化されていたといえる。第2に、超音波診断を実施しないで、レオポルド触診法を用いた腹部診察により妊婦診察を行う場合は、妊婦の身体感覚で胎児の存在や発育の程度を確認していた。また、レオポルド触診法は妊婦自身で行う自己診察の方法を伝承する役割も持っていた。 総じて、本研究では、超音波診断装置の導入により、健康な妊婦の順調な妊娠経過を診察する妊婦健診が、異常の早期発見、早期治療を目的にした妊婦検診(疾患診断)に変化したことが明らかになった。
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