2002 Fiscal Year Annual Research Report
女性に対する暴力・男性の暴力性の構築についてのジェンダー論的研究
Project/Area Number |
13837032
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
国広 陽子 武蔵大学, 社会学部, 教授 (10308017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木脇 奈智子 羽衣学園短期大学, 人間生活学科, 助教授 (00280066)
加藤 千恵 東京女学館大学, 国際教養学部, 助教授 (30269427)
室井 尚恵 西武文理大学, サービス経営学部, 助教授 (60269355)
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Keywords | ジェンダー / 女性に対する暴力 / ドメスティック・バイオレンス / 男性の暴力性 / ライフヒストリー |
Research Abstract |
本研究は、男女の権力関係の実態に注意を払いながら、男性高齢者調査と、ドメスティックバイオレンスの加害者対策に取り組む研究者・実践家へのインタビュー調査を行い、報告書をまとめた。 まず、北海道・九州・東京周辺在住の現役時代にさまざまな職業に就いていた61歳から84歳までの男性計11名のライフヒストリーを聞き取り、男性がどのような暴力経験を経て成人したのか、戦前と戦後とで暴力観やジェンダー意識にどのような連続性や変化があったかを分析した。暴力をめぐる同世代の女性の経験と男性の経験は大きく異なっている。 全体的に暴力は否定的に語られる場合が多いが、それは同時にさまざまな暴力正当化の言説を伴っている。とくに軍隊経験は肯定的に語られるケースが目立った。つまり軍隊の上司が部下を教育し、あるいは夫が妻をしつけるための身体的暴力は肯定的に語られた。この世代の男性にとって、暴力とみなす行為の範囲はきわめて狭い。戦前に抱いていた暴力観・ジェンダー意識は表面的には変化しているものの、基層では連続している様子が伺えた。 研究者・実践家インタビューからは、日本での加害者対策の課題が浮き彫りになった。加害者の再教育機関がほとんどなく、再教育プログラムも整備されていない状況下で、多様な立場から加害者プログラムの必要性が指摘され、試行されている。異なるアプローチをとる研究者・実践家間にネットワークはなく、分立気味の現状が浮かび上がった。
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