2001 Fiscal Year Annual Research Report
エンマムシ科甲虫の分子系統に基づく形態多様性創出機構の解明
Project/Area Number |
13839003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大原 昌宏 北海道大学, 総合博物館, 助教授 (50221833)
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Keywords | エンマムシ科 / 分子系統 / 甲虫目 / 28S / 16S / ND2 |
Research Abstract |
北海道札幌地区では月に4度ほどの定期的なサンプリングを実施、また東北地方と対島へはサンプリング調査出張をおこない、30種に及ぶエンマムシ科甲虫約120個体を採集した。採集された標本はDNA抽出用のアルコール標本と同定用の乾燥標本に作製した。これに伴い標本箱・サンプル用バイアルを購入した。 採集された標本と海外・国内の研究協力者から提供された10種ほどのサンプルを合わせて、4亜科5族20属40種からDNA抽出をおこなった。抽出部分は核DNAの28S部位、ミトコンドリアDNAのND2および16S部位を用いた。エンマムシ科における分子研究は過去に行われていないため、他甲虫(テントウムシ科)や節足動物で用いられているプライマーを試みた。 28Sでは27種から、ND2では10種から、16Sでは17種からシークエンスが得られた。 16Sは533baseの長いシークエンスが得られたため、近隣結合法、最小進化法、最節約法をもちいて系統樹を作成した。その結果、エンマムシ族の単系統性が強く示唆される分岐図が得られ、属間系統が明らかになった。またブーツストラップ値は低いもののそれぞれの亜科間関係においても形態から得られた系統関係と整合するトポロジーが得られた。 エンマムシ族は形態分類が混乱しているため、これらの分子系統の結果が形態による分類体系の再検討に重要な意味を持つ。特に、動物の糞に依存する属・種グループ(糞に集まるハエ類幼虫の捕食者)と動物の死体に依存するグループの属・種レベルでの多様性創出機構の進化シナリオをたどることが可能となる。これらのグループのより詳細な系統を再構築するためにサンプル数を増加する必要があり、来年度の調査方法を検討している。 これらの結果は、エンマムシ科甲虫においてはじめて示された分子系統であり、日本昆虫学会北海道支部大会において、口頭発表を行った。
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