2002 Fiscal Year Annual Research Report
ナガウニ科ウニの幼生骨格形態多様性の進化に関する総合的研究
Project/Area Number |
13839008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 洋 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60303806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白山 義久 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60171055)
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Keywords | ナガウニ / 比重 / 分布深度 / 幼生 / プランクトン / 骨格形態 |
Research Abstract |
ウニ幼生の骨格形態の違いにどのような生態的意義があるのかを考えるため,和歌山県田辺湾に生息するナガウニ科4種を対象として,幼生の比重及び沈降速度を測定した.また,4種間で幼生の行動・分布に違いがあるかを調べるため,幼生の深度別採集を行った.比重測定の結果,幼生の比重は4種間で有意に異なることがわかった.比重の違いは,骨格のサイズ及び付属突起の多さと対応していた.また,比重が大きい幼生ほど速く沈降することがわかった.幼生の比重は4種ともに海水より重かったため,これらの幼生は摂餌のために常に遊泳が必要とされる.比重及び沈降速度が速い幼生では,より遊泳のためのエネルギーが必要と考えられる.幼生の層別採集の結果,夜間はどの種も表層から深度2mまでの間に分布し,昼間は4種のうち3種は表層から深度2mまでの間に,1種は深度2-4mの間に主に分布していることがわかった.幼生の分布は,どの種も塩分濃度の躍層があるところに集中する傾向がみられたため,主に非運動性粒子的なものと考えられる.一方で,昼間における分布深度の違いは比重の大きさとは関係がみられなかったため,1m前後の分布深度の種間差は幼生が能動的に生みだしていると考えられる.各層における植物プランクトン量を比較すると,昼夜共に,表層から深度2mまでは多いがそれより深くなると急激に減少していた.このため深度2-4mの間に分布する種は昼間にほとんど摂餌できないことが予想される.幼生が比重の違いに応じた受動的な分布ではなく,より能動的な鉛直分布をしていたことから,骨格形態の違いがもたらす比重や沈降速度の違いは,メートル単位の大きな分布の違いには反映されないと考えられる.比重の違いは,より小さなスケールにおける遊泳や摂餌能,捕食回避等の違いに関連するのかもしれない.
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