2002 Fiscal Year Annual Research Report
両生類のミトコンドリアDNAに関する分子進化学的研究
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13839012
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
住田 正幸 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10163057)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / 全塩基配列 / 遺伝子配置 / 両生類 / カジカガエル / 分子進化 / 種分化 / 系統進化 |
Research Abstract |
細胞質ゲノムであるミトコンドリアDNAは、遺伝子構成の単純さと実験的操作の容易さから、近年分子生物学的にも分子進化学的にも注目されている。本年度の研究目的は、両生類の系統進化過程におけるミトコンドリアDNAの遺伝子配置の変化の実態を明らかにするとともに、種内分化および種分化の過程を解析するうえで有効な指標となる遺伝子を検索することである。このため本年度は、アオガエル科のカジカガエルのミトコンドリアDNAのゲノム構造を解析するとともに、本種の種内分化および近縁種との種分化の実態を遺伝子レベルで解明し、それらの過程を解析するうえで有効な指標となる遺伝子を検索した。先ず、カジカガエルのミトコンドリアDNAの一部の領域(3568 bp)についてシークエンシングを行い、その塩基配列を解析したところ、この領域の遺伝子配置は5'-ND5-tRNA^<Leu(CUN)>-tRNA^<Thr>-tRNA^<Pro>-tRNA^<Phe>-12S rRNA-tRNA^<Val>-16S rRNA-3'であった。この遺伝子配置をこれまでに報告されている4種の両生類のミトコンドリアDNAの遺伝子配置と比較すると、カジカガエルではトノサマガエルと同様に4つのtRNA遺伝子の配置が変化していることに加えて、ND5遺伝子の転座が本種に固有に起きていることがわかった。本研究によって、無尾両生類の系統進化過程において、ミトコンドリアDNAの遺伝子配置に様々な変化が起っている可能性が示唆された。さらに、カジカガエルとその近縁種であるアオガエル類4種1亜種について、ミトコンドリアゲノムの12Sと16SのrRNA遺伝子のそれぞれ467 bpと585 bpの領域の塩基配列を決定し、系統解析を行った。その結果、カジカガエルには12S rRNA遺伝子で13個の、16S rRNA遺伝子で11個のハプロタイプが、また、近縁なアオガエル類4種1亜種にはそれぞれの種や亜種に固有のハプロタイプが観察された。各ハプロタイプ間の塩基置換率を基に系統解析を行ったところ、ミトコンドリアゲノムの12Sと16SのrRNA遺伝子はカジカガエルとその近縁種の種分化や種内分化の実態を把握するうえで、有効な指標になることが明らかになった。
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[Publications] Sumida M. et al.: "Inter-and intraspecific evolutionary relationships of the rice frog Rana limnocharis and the allied species R. cancrivora, inferred from crossing experiments and mitochondrial DNA sequences of the 12S and 16S rRNA genes"Molecular Phylognetics and Evolution. 25. 293-305 (2002)
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[Publications] Sumida M. et al.: "Reproductive isolating mechanisms and molecular phylogenetic relationships among Palearctic and Oriental brown frogs"Zoological Science. 20(5)(in press). (2003)