2001 Fiscal Year Annual Research Report
緩歩動物オニクマムシの生活史および初期発生に関する研究
Project/Area Number |
13839015
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 忠 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90216359)
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Keywords | 緩歩動物 / クマムシ / 生活史 / 発生 / 飼育 |
Research Abstract |
オニクマムシMilnesium tardigradum(緩歩動物門)を継代飼育することによって、その生活史の全貌が明らかになった。その成果を以下にまとめる。 飼育法 当研究室において維持されている原生動物培養中に混入していたワムシの一種が、このクマムシの餌として有用である事が確認された。また餌としてのワムシ培養を維持する事も可能となった。プラスチック・シャーレ中に2%寒天を固め、水を加えて生活の場とし、ここに適宜ワムシを餌として加えることによってオニクマムシを継代飼育している。本研究では25℃の恒温条件で生活史を観察した。 摂食行動 オニクマムシは1齢幼虫の時からワムシを捕食する。餌を丸飲みする事は不可能であるが、体液を吸引して摂食する。幼虫は2回脱皮した後に成熟する。成虫は餌を求めて徘徊し、ワムシに出会うと即座に捕食し丸飲みにする。何らかの誘引物質に反応している様子は認められず、たまたま口の近傍に餌が来た場合に吸い付くようである。成虫の一回の食事で11〜13匹程のワムシを続けて食べるのが観察された。 脱皮周期、産卵および寿命 幼虫は4〜5日毎に脱皮して成虫となる。その後の脱皮は必ず産卵を伴う。本研究で扱った個体群は全て雌で単為発生をしている。クマムシは普段広い寒天上を餌をもとめて歩き回っているが、脱皮/産卵の時は、寒天の亀裂箇所などのような狭い場所にもぐり込む。これまで観察されたうちもっとも早いものでは孵化後12日目に最初の産卵が確認された。成虫はおよそ一週間毎に脱皮/産卵し、最大8齢までの生存が確認された。一回の産下卵数は個体差が大きく、最小1個最大12個だったが、通常は5〜6個程度であった。25℃でこれまで観察された最長寿命は58日で、この個体は合計41個産卵した。 これらの結果から、オニクマムシを材料として緩歩動物の発生研究を続けることは十分可能であると判断された。また、本研究では個体追跡による成長過程の記録が可能となったため、クマムシの個体レベルの全生活史がはじめて明らかになったといえる。
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