2004 Fiscal Year Annual Research Report
有明海の環境変化が漁業資源に及ぼす影響に関する総合研究
Project/Area Number |
13854006
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中田 英昭 長崎大学, 水産学部, 教授 (60114584)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石坂 丞二 長崎大学, 水産学部, 教授 (40304969)
玉置 昭夫 長崎大学, 水産学部, 教授 (40183470)
藤田 雄二 長崎大学, 大学院・生産科学研究科, 教授 (80039726)
竹村 暘 長崎大学, 水産学部, 教授 (70039725)
松岡 數充 長崎大学, 水産学部, 教授 (00047416)
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Keywords | 有明海 / 赤潮 / 漁業資源 / 透明度 / 堆積物 / スナモグリ類 / エイ類 / 環境ホルモン |
Research Abstract |
本年度に新たに得られた研究成果の概要は以下の通りである。1)有明海奥部における最近年の透明度の上昇は、筑後川等の懸濁物濃度の減少よりも、潮流速の減少に伴う海底泥の巻上げ量の減少や長期的な干潟の減少の影響をより大きく受けている。2)流入河川による栄養塩供給に加えて鉛直成層構造が栄養塩やクロロフィルaの分布に大きな影響を与えており、小潮期に発達する塩分躍層の直上にクロロフィル極大層が形成・維持されることが赤潮発生の契機となっている可能性がある。3)2002年12月から2004年7月まで諌早湾湾口部(係留ブイ)で実施した水温・塩分・クロロフィルa・流向流速の連続測定結果によれば、諌早湾口における植物プランクトン量は、冬から春には潮汐、夏から秋には有明海奥部から移動してくる河川系水の影響を大きく受けて変動している。4)有明海奥部の筑後川河口西側で採取した堆積物コアに含まれる渦鞭毛藻シストの計数・分類の結果によれば、厳密な年代の特定は難しいものの、試料採取地点付近では最近になって栄養塩負荷が増大傾向にある。5)マハゼを対象に用いた河口域の環境ホルモン汚染に関する調査結果によれば、有明海の大牟田周辺の底泥にアルキルフェノール類が高濃度に存在しており、それがマハゼ血清中に高濃度のビテロジェニンが検出される原因となっている。6)有明海の砂質干潟に生息する二枚貝と大型ベントス(スナモグリ類など)の食物源について分析した結果、いずれも主に植物プランクトンに依存しており、両者の間に餌をめぐる競合があることが裏付けられた。7)不定期な河川出水による塩分低下と泥の堆積がアサリなど二枚貝の減耗要因となっている。最近年は砂の侵食と泥の選択的堆積が進行しそれが二枚貝の生息環境を悪化させている可能性が高い。8)有明海の優占種でありながら最近漁獲量が減少しているシログチについては、産卵が貧酸素化の進行する夏季に集中していることが減少の重要な要因となっている可能性がある。一方、最近年のアカエイ類の増加は、温暖化の進行や捕食者(サメ類)の減少と関連しており、アカエイ類の増加によって底棲の他の魚類との間の餌をめぐる競合が強まっている。9)ナルトビエイによるタイラギなど二枚貝の捕食量は相当に大きく、タイラギ資源回復のためにはこの食害の問題を解決することが不可欠である。 以上の成果の多くは、論文や学会における研究発表の形で公表されている。2004年12月には、佐賀大学・熊本大学等の合同で長崎大学において学術講演会を開催し、成果の一部を発表した。また代表者(中田)が韓国国立海洋研究院の招待を受け、干潟の環境変化に関するシンポジウムで本研究成果の紹介を行うなど、国際的な惰報交換も活発に進めている。
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Research Products
(7 results)