2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13854010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷口 直之 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90002188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三善 英知 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (20322183)
顧 建国 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40260369)
本家 孝一 高知大学, 医学部, 教授 (80190263)
鄭 文玉 佐賀大学, 医学部, 教授 (60252657)
高橋 素子 佐賀大学, 医学部, 助教授 (00303941)
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Keywords | 糖鎖 / 糖転移酵素 / 接着分子 / 増殖因子受容体 / がん転移 |
Research Abstract |
細胞に発現する糖鎖構造は糖転移酵素、糖鎖分解酵素などの糖鎖合成関連遺伝子(糖鎖遺伝子)の発現パターンにより決定される。これらの遺伝子をもちいて、糖鎖リモデリング、そしてグライコミクスの手法によって糖鎖の生理機能、癌転移への影響、疾患との関連などが明らかとなりつつある。また、バイオマーカーとしての応用も期待されている。コアフコースは糖タンパク質のN-結合型糖鎖の根元のN-アセチルグルコサミンにα1,6フコース転移酵素(Fut8)によって転移されるフコースである。これまでの研究から、このα1,6フコースは多くの糖蛋白質の機能制御に大きく関わることが予想されているが、このα1,6フコースの生理的な機能や標的糖タンパク質への機能制御に関しては、ほとんど不明である。最近、著者らはFut8のノックアウトマウスの作成に成功した。この変異マウスは生後早い時期に死亡してしまい、α1,6フコースが成長発育に必須であることが判明した。Fut8のノツクアウトマウスでは著しい成長障害と肺気腫様の病理変化を認め、その分子メカニズムが次第に明らかとなった、TGF-β受容体にこのα、6フコース糖鎖が付加されないと、受容体とリガンドであるTGF-βとの結合性が低下し、TGF-β受容体を介してマトリックスメタロプロテアーゼの発現抑制が解除される。それによって、肺組織の細胞外マトリックス生合成と分解の均衡が破れ、分解酵素が多量に作られ、肺組織が壊れて肺気腫になることをマウスの実験で確認した。またこの欠損マウスはこのTGF-βを大量に投用することにより肺気腫が改善することも確かめた(PNAS 102 15791-6,2005)。糖鎖が多くの病気にかかわることは知られていたが、特定の糖タンパク質についているN-結合型糖鎖が病気の原因となるのが初めての例である。一方、細胞増殖と深く関わるEGF受容体にはこのフコースを欠損すると、EGFからのシグナルをうまく伝達されなくなることをFut8のノックアウトマウスまたは細胞で確認された(JBC 281,2572-7,2006)。また、難治性の癌の1つとして知られる膵臓癌の血清中にフコシル化ハプトグロビンが特異的に増加し、新しい膵癌の腫瘍マーカーになる可能性を示すとともに、その詳細な糖鎖構造を決定した(Int.J.Cancer in press)。
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Research Products
(21 results)