2002 Fiscal Year Annual Research Report
細菌異物排出タンパク遺伝子資源のポストゲノム解析と新しい耐性機構の解明
Project/Area Number |
13854012
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 明人 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60114336)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 隆弘 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (90333450)
村上 聡 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (30300966)
|
Keywords | 多剤耐性 / ポストゲノム / 異物排出トランスポーター / 多剤排出 / 二成分情報伝達系 / 強制発現 / 遺伝子ライブラリ / 排出タンパク |
Research Abstract |
14年度は細菌異物排出トランスポーターポストゲノム網羅的解析を大きく完成させた年になった。大腸菌の異物排出タンパク推定遺伝子すべてを強制発現クローニングし、実に20種類が実際に何らかの異物(薬物・毒物)を排出していることを立証した。大腸菌のゲノム解析が完了し、遺伝子が推定された段階で、ポストゲノム解析をどう進めるかを巡っては意見の対立があった。予想外に多数の異物排出タンパク遺伝子が内在していることに対し、その推定が本当に正しいかどうか調べるにはそれらの遺伝子を一つ一つノックアウトすべきという意見が一方にあった。その考え方に沿った研究報告は、私たちの研究報告とほぼ同時に米国のグループによってなされたが、結果は、わずかに3種類のみがノックアウトによって薬剤感受性を上昇させるというものだった。異物排出遺伝子の大部分は通常の条件下では発現していない。このために、ノックアウトしても形質に変化がないものが大部分になる。私たちはこれに対しクローニングライブラリによる強制過剰発現という手法を取り、20種類の排出タンパクを同定することに成功した。さらに、これら排出タンパク遺伝子の発現が、細菌の環境感知応答システムである二成分情報伝達系によって制御されていることを初めて見いだした。その知見に立って、大腸菌の30種類の二成分情報伝達系遺伝子をやはりクローニングして強制過剰発現させ、15種類が薬剤耐性の上昇をもたらすことを見いだした。そのうち5種類が異物排出遺伝子の発現を調節していた。環境応答の一環として薬剤耐性が生じるという知見は、発見されてみると当然のような気がするが、今までこのような機構による薬剤耐性は臨床的には発見されていない。これが、将来起こりうるとしたら、潜在的な排出遺伝子の膨大なストックの存在と考え合わせると、未来の化学療法にとって深刻な脅威と言える。本研究が、未来の潜在的脅威に対する対策を講じる助けになることを願っている。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] S.Nagakubo, K.Nishino, T.Hirata, A.Yamaguchi: "The putative response regulator BaeR stimulates multidrug resistance of Escherichia colivia a novel multidrug exporter system, MdtABC"J Bacteriol.. 184. 4161-4167 (2002)
-
[Publications] S.Murakami, R.Nakashima, E.Yamashita, A.Yamaguchi: "Crystal structure of the bacterial multidrug efflux transporter, AcrB"Nature. 419. 587-593 (2002)
-
[Publications] H.Hirakawa, K.Nishino, T.Hirata, A.Yamaguchi: "Comprehensive studies on drug resistance mediated by the overexpression of response regulators of two-component signal transduction systems in Escherichia coli"J Bacteriol.. 185. 1851-1856 (2003)
-
[Publications] K.Nishino, Y.Inazumi, A.Yamaguchi: "Global analysis of genes regulated by EvgA of the two-component regulatory system in Escherichia coli"J Bacteriol.. 185(in press). (2003)
-
[Publications] 西野邦彦, 山口明人: "細菌ゲノムに潜む薬剤耐性因子"日本細菌学雑誌. 57. 453-464 (2002)
-
[Publications] 村上聡, 山口明人: "多剤排出トランスポーターAcrBの結晶構造解析"細胞工学. 21. 1520-1521 (2002)
-
[Publications] 村上聡, 山口明人: "異物排出トランスポーターの結晶構造、ついに決まる"蛋白質核酸酵素. 48. 26-32 (2003)