眼球運動系を手がかりとする精神機能の脳内メカニズムの解明

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13854029
• Research Institution: Okazaki National Research Institutes
• Principal Investigator: 伊佐 正 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (20212805)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 小林 康 大阪大学, 大学院・生命機能研究科, 助教授 (60311198)
• Keywords: サッケード運動 / 上丘 / 注意 / 動機付け / アセチルコリン / サル / 脳スライス

Research Abstract

(1)一次視覚野損傷動物における視覚誘導性サッケード運動の解析
網膜から外側膝状体を介して一次視覚野に至る膝状体視覚系と並行して存在する「網膜-上丘浅層-視床枕-頭頂葉」という「膝状体外視覚系」の機能を知るために一次視覚野を一側性の除去したサルにおいてサッカード課題の遂行能力を調べたところ、「盲」となっている視野に対する通常の視覚誘導性サッカードだけでなく、記憶誘導性サッカード課題も遂行可能であることが明らかになった。このことは膝状体外視覚系を介して入力する視覚によってトップダウンの注意、ワーキングメモリが駆動できることを意味する。
(2)上丘中間層空間マップにおける遠隔部位間の相互作用
多くの心理実験によって、視野の一点に提示された視覚刺激は遠くの部位へのサッケードの開始を抑制することが知られている。この"distractor"効果"が上丘に展開されるマップ上の2点間の相互作用によるものかどうかを検討するため、サルの上丘中間層の一箇所にニコチンを注入してその部位以外がコードするサッケードに対する影響を調べたところ、遠隔部位へのサッケードの反応時間、軌道、終点ともに影響を受けなかったことから、上丘ベルでの遠隔部位間の抑制性相互作用は強くなく、distractor効果は上丘の神経機構によるのではないことが示唆された。
(3)上丘浅層・視神経層のwide field vertical cellの樹状突起による情報処理機構
ラットの上丘スライス標本において、浅層と視神経層に存在するwide field vertical cellの樹状突起にはhyperpolarization-activated cation current(Ih)を誘発するHCN1チャンネルが密に分布しており、これらのニューロンが動きの入力に対して鋭敏に発火できるように樹状突起での活動電位生成の閾値を下げていることを明らかにした。
(4)上丘中間層に対するコリン作動性入力の作用機序
上丘中間層に対するコリン作動性入力の作用を明らかにするためにラットの上丘スライス標本からホールセル記録を行い、カルバコールの効果を調べたところ、α4β2型ニコチン受容体を介する内向き電流、M3型ムスカリン受容体を介する内向き電流、M2型受容体を介する外向き電流が検出された。
(5)GAD65ノックアウトマウスにおけるサッケード運動の解析
抑制性神経伝達物質GABAの合成酵素GAD65のノックアウトマウスのサッケードを解析したところサッケードの停止が不安定であることを見出した。

Research Products

• [Publications] Saito Y, Isa T: "Local excitatory network and NMDA receptor activation generate a synchronous and non-linear bursting command from the superior colliculus."Journal of Neuroscience. 23. 5854-5864 (2003)
• [Publications] Alstermark B, Ogawa J, Isa T: "Lack of monosynaptic corticomotoneuronal excitation in the adult rat : fast disynaptic excitation is mediated via reticulospinal neurones and slow polysynaptic excitation via segmental interneurons."Journal of Neurophysiology. 91. 1832-1839 (2004)
• [Publications] Saitoh K et al.: "Nigral GABAergic inhibition upon cholinergic neurons in the rat pedunculopontine tegmental nucleus."European Journal of Neuroscience. 18. 879-886 (2003)
• [Publications] Sakatani T, Isa T: "PC-based high-speed video-oculography for measuring rapid eye movements in mice."Neuroscience Research. (In press). (2004)
• [Publications] Katsuta H, Isa T: "Release from GABA_A receptor-mediated inhibition unmasks interlaminar connection within superior colliculus in anesthetized adult rats."Neuroscience Research. 46. 73-83 (2003)
• [Publications] Endo T et al.: "Characteristics of GABAergic neurons in the superficial superior colliculus."Neuroscience Letters. 346. 81-84 (2003)
• [Publications] Isa T, Kobayashi Y: "Brain mechanisms for the integration of posture and movement (Progress in Brain Research, vol 143)"Elsevier. 529(7) (2004)