2001 Fiscal Year Annual Research Report
「家庭レジリエンス」概念の実証的研究によるより機能的な家族援助実践への提言
Project/Area Number |
13871031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
得津 愼子 関西福祉科学大学, 社会福祉学部, 講師 (50309382)
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Keywords | 家族 / 家族レジリエンス / システム論に基づく家族療法 / コミュニケーション / ソーシャルワーク / 解決志向型ソーシャルワーク / 社会構成主義 / 家族ホメオスタシス |
Research Abstract |
1.調査研究について 研究初年度である平成13年度は「家族が危機的状況を乗り越えるための要因」と題する質問紙調査を行い、以下の成果を得た。 (1)「家族危機」と認識される状況の報告が少なく、家族は、とりわけ一般的な家族周期上の危機を家族危機と認識するまでもなく乗り越えている。 (2)「家族危機」と想定されるような状況の回復に当たっては、専門家や家族以外の誰かから援助を受けずに家族で解決したという回答が多く、まずは、家族のみで回復しようとしていることが明らかになった。 (3)これらの結果から鑑みて、専門的な援助を必要とするような「家族危機」的な状況の多くが、家族レジリエンスによって回避されているのではないかという仮説が検証された。 これらの結果に基づいて、平成14年度以降は「家族危機」的状況を明確化できるスケールを作成し、そのスケールに基づいて、家族レジリエンスを促進する要因を抽出する予定である。 2.先行研究の分析について 個人・家族レジリエンスに着目した援助理論を概観し、以下の認識を新たにした。 (1)社会福祉においては、0.ランクの意思心理学を端緒として、コンピテンス・アプローチ,ストレングス・アプローチ等において、すでに個人の自然の回復力を信じ、それを促進する援助を目指すスタイルが登場しており、それが今日のエンパワーメント・アプローチに繋がっている。 (2)家族療法の文脈において、家族レジリエンスは、家族ホメオスタシス、家族のオートポイエシス等の言葉で説明されており、かつ今日では古典的と言われるスタイルの家族療法においても、機能的なコミューケーション過程が家族の自律的な問題解決過程であり、そのゆえに効果的なコミュニケーションによって家族レジリエンスが活性化する援助となるべく論議がなされてきた。 (3)近年の社会構成主義による解決志向型ソーシャルワークにおいて、T.アンデルセン、H.アンダーソン、F.ワルシュ、M.ホワイト等が、それぞれクライエントの自律性、家族レジリエンスの有効性に着目している。 今後は、それらとソーシャルケースワークとの相互影響過程をより明確にして行く予定である。
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