2001 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジル多文化社会における日本移民の老いとエスニシティに関する文化人類学的考察
Project/Area Number |
13871043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Heian Jogakuin(St.Agnes')University |
Principal Investigator |
金本 伊津子 平安女学院大学, 現代文化学部, 助教授 (60280020)
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Keywords | 老い / エスニシティ / 文化変容 / ブラジル / 日系人 / 移民 / 高齢化 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
ブラジル連邦共和国サンパウロ州サンパウロ市・グァタパラ地区を中心に行ったフィールドワーク(平成13年8月12日〜9月24日)において、以下のような研究成果が得られた。 (1)I.B.G.E.(Fundaco Instituto Brasileiro de Geografia e Estatistica)の人口動態調査資料は、肌の色(白・褐色・黒・黄色・ネイティブ)という分類に基づいており、日本人・日系人の多くを含んでいる「黄色」の統計は、1950年度において約3.7%であった高齢化率が、1980年には約7.0%に上昇したことを示している。2000年におけるブラジル全体の低い高齢化率(4.5%)から鑑みると、高齢化問題はアジア系エスニック・グループに顕著に発生していることが判明した。 (2)サンパウロ日系援護協会事業報告書(1960-2000年)は、老いの過程にエスニック・グループが深く関わっていることを示している。1970年代には生活困窮者としての老人に対する問題意識が芽生え、日系老人のためのホームの建設、老人援助活動の開始、日本の年金取得のための支援体制の整備が行われた。高齢化率が9.7%に達する1988年頃には、増加する要介護者に対応するための福祉施設が設立された。現在は、若・壮年層の日本への流出・定住化に伴い、介護者の不在という深刻な問題に直面している。グァタパラ移住地ではデカセギの影響を強く受け、高齢化率40%という危機的状況下にあることが判明した。 (3)個人の老いを分析するために、日系老人福祉施設(憩いの園・サントス厚生ホーム・あけぼのホーム・サクラホーム)や老人クラブにてオーラル・ライフ・ヒストリーの収集を行った。彼らは、老いを文化の問題と捉え、異文化で老いと対峙する老人のために日本文化の環境を提供する日系コロニアに信頼と安らぎを寄せていることが明らかとなった。
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