2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13873007
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
中込 正樹 青山学院大学, 経済学部, 教授 (30137020)
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Keywords | 犯罪の経済学 / 公共性 / 私的性 / 意味論的逆転 / 意味論的制約 / ベッカー / アーレント / ミクロ的人間観 |
Research Abstract |
本年度も当初の目標をめざして,研究の独創性を明確にするように留意しながら,具体的な成果の達成をめざした。実際に完成した論文は,研究発表欄に記載したように2本であるが,それ以外に著作(単著)を1冊書き上げた。(「『自由』を超えて:内発性の経済学」)この本の中心部分は,自由と内発性の認識論的分析であり,犯罪の認識論的な意味も「自由の喪失」として定式化できるということから,この本の核心的位置を占めるものになる。今後さらに修正・再検討を加えて,何らかの形での出版も考えていきたい。 以下では,本年度発表した2本の論文について,その概要を説明する。 「競争の中の病理:自由の喪失」の論文は,上で述べた未発表の著作につながる内容となっている。犯罪の起因を「自由の喪失」と考えると,その喪失が競争的市場経済の中でなぜ,いかなるメカニズムで生じているのかを考察した。このアプローチは,競争的市場経済の中における犯罪の発生を考察していくときの根本的分析視点となりうる。また従来のシカゴ学派的な「犯罪の経済学」に対しても,根元的な批判となりうる。 もう1つの論文「元型論のレゾンデートル:不確実性への新たなアプローチ」も,上述の著作へつながるものである。新たにユング心理学の「元型論」を取り上げ,それが意味の喪失としての不確実性の問題に対して,いかなる方法論的な革新をもたらすのか考えた。不確実性を意味の喪失と考えると,それは犯罪行為の認識論的理解と直接的な関わりを持ってくる。このことを指摘しながら,この論文では,犯罪の認識論的分析の射程を一層拡大させることをめざした。
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