2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13874079
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 筑波大学, 化学系, 教授 (60176865)
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Keywords | 単分子磁石 / 鉄錯体 / 金属錯体 |
Research Abstract |
強磁性は1次相転移を伴う現象であり,相転移点(Tc)以下でドメイン内のすべてのスピンが揃い自発磁化を示すいわゆる磁石となる.このドメインのサイズを小さくした微粒子は比較的低い磁場で磁気飽和を示し,相転移を伴わずに粒子内のスピンがすべて揃う超常磁性となる。超常磁性をしめす分子は、バルクでは見られない、量子スピントンネル効果や分子自身が磁石として働くため分子メモリーへの応用が期待される物質群である。本申請研究では、より高いブロッキング温度を持つ単分子磁石の合成を試みた。単分子磁性体の構築にはクラスター分子が高いスピン多重度を基底状態に持ち,さらにクラスター全体で磁気異方性をもつ必要がある。ここで、金属錯体の高い基底スピン多重度は、金属イオンの磁気的軌道を直交するように分子内で並べることにより達成することができる。具体的には、金属イオンを架橋原子で90°つなぐ(架橋する)架橋配位子を設計することがキーポイントとなる。 我々は、サリチルアルデヒドとアミノアルキルエタノールとの脱水縮合で合成される三座シッフ塩基配位子が種々の金属イオンを90°で架橋し、金属イオン間に強磁性的相互作用を誘起することを見出した。本申請研究では、化学修飾したこの三座シッフ塩基配位子と鉄(II)イオンとの反応により、鉄(II)4核高スピンクラスター分子を合成した。この錯体は、4つの鉄(II)イオンがアルコキソ基により架橋されたキュバン型錯体であり、鉄(II)イオンのスピンがすべて揃ったS=8の基底状態を持つ。さらに、合成したいくつかの錯体の交流磁化率は、周波数に依存した虚部のシグナルを与え、得られたデータの解析によりブロッキング温度(分子が磁石となる温度)が約1Kの単分子磁石であることが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 大塩寛紀: "Cyanide Bridged Molecular Squares with Ferromagnetically Coupled Mixed-Spin System"Inorg. Chem.. 41. 5817-5820 (2002)
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[Publications] 大塩寛紀: "Structures and Magnetic Properties of Di and Tetranuclear Nickel(II) Complexes with Schiff-base Ligands"Chem. Lett.. 844-845 (2002)
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[Publications] 大塩寛紀: "Incomplete and complete manganese cubes"Chem. Lett.. 1016-1017 (2002)
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[Publications] 大塩寛紀: "Mixed Valent Fe(II, III) Wheel with S=29/2 Ground State"Angew. Chem.. 42. 223 (2003)
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[Publications] 大塩寛紀: "Syntheses, Structures and Magnetic Properties of Multinuculear Manganese Complexes with Schiff Base Ligands"Inorg. Chem. Commun.. 377 (2003)