2002 Fiscal Year Annual Research Report
母親の松果体ホルモンが齢と関連して妊娠・発達・性の分化に及ぼす影響
Project/Area Number |
13877001
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加地 隆 弘前大学, 医学部, 教授 (00001876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 誠二 弘前大学, 医学部, 助手 (10241449)
外崎 敬和 弘前大学, 医学部, 講師 (50155545)
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Keywords | 松果体除去 / メラトニン投与 / 出産仔数 / 性周期 / 性染色体 / 先天奇形 / 網膜の発達 / カルシウム結合タンパク |
Research Abstract |
ヒトと同様に生殖活動に季節変動の見られない雌性ラットで、松果体からのメラトニンの有無は加齢と関連して生殖機能、その胎仔・乳仔の発達にいかなる影響を及ぼすか等を検索した。 1.対照母と比較して松果体除去(PX)母からの出産仔数は、90〜100日齢の初産時に多く、以後の齢期では初産と2回目以後とに拘わらず差がないことを確認した。 2.性周期:生後18〜19か月の老齢で、対照ラットでは4日周期を示す個体が極めて少ないのに対し、PXラットでは4日周期を示す個体が約半数以上を占めた。4日周期を示す18か月齢PXラットにメラトニン入り飲料水を時間制限装置により日内暗期に飲ませると、発情間期が増え4日周期が崩れる例が多かった。その後に溶媒のみの飲料水を与えた場合、4日周期に復帰しない例も見られた。一方、生後18か月で連続非発情状態にある対照ラットおよびPXラットに同様にメラトニンを飲ませても連続非発情状態は変化しなかった。 3.生殖器の肉眼構造上の性と染色体形態上の性を、PXラットと手術対照ラット総計約100匹を用いて比較したが、ほぼ100%一致していた。 4.PX母からの出産仔の中に時々無尾症又は水腎症(腎嚢胞)等の先天奇形をもつ個体が見出された。一方、対照群の母ラットからの出産仔にはこのような奇形はまったく見出されなかった。PX群と対照群の仔、各々約1000匹づつを観察・剖検し、PX母からの出産仔において奇形の発現率が有意に増加する(Fisherの直接確率法)事を認めた。従って、母親の松果体の存在は胎仔の発達に影響を与え、奇形の発現を抑制する可能性がある。 5.PX母ラットからの出産仔の網膜アマクリン細胞におけるある種のカルシウム結合タンパクの量が、対照母ラットからの出産仔のそれよりも生後35日で増加している事を見出した。妊娠中は連続照明、生後は通常の24時間明暗周期のもとで飼育した仔の成績をあわせると、母親の松果体ホルモンが胎仔の網膜の発達に影響を及ぼす可能性がある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 加地 隆: "松果体除去母ラットからの仔における先天奇形の発生増加"解剖学雑誌. 78・Suppl.. 281 (2003)
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[Publications] T.Kachi: "Pinealectomy and melatonin influence the estrous cycle in aged Wistar-strain rats"The Japanese Journal of Physiology. 53・Suppl.(発表予定)(総会抄録). (2004)