2001 Fiscal Year Annual Research Report
脳死後の肺障害発生機序の解明と肺機能温存法開発に関する研究
Project/Area Number |
13877184
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Research Category |
Grant-in-Aid for Exploratory Research
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西野 正人 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (60263290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶋津 岳士 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (50196474)
田中 裕 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90252676)
杉本 壽 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90127241)
小倉 裕司 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70301265)
鍬方 安行 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (50273678)
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Keywords | 脳死 / 急性肺障害 / 炎症性サイトカイン / 血液レオロジー / 白血球変形態 |
Research Abstract |
急性脳粗大病変(重症頭部外傷,脳血管障害など)による脳死症例患者の急性肺傷害の機序を解明するため,脳死前後での血中炎症性マーカー(CRP, IL-6),多核白血球機能(活性酸素産生能)ならびに血液レオロジー,白血球内F-アクチン含有量を測定し,脳死前後における肺酸素化能,単純胸部レントゲン所見,胸部CT所見との関係を検討した。肺感染症の合併していない患者では脳死前では,肺酸素化能は良好に保たれており胸部単純レントゲン写真,胸部CT写真でも,肺浸潤影は顕著ではなかった。感染症が存在しない症例での血中CRP, IL-6濃度も低値であった。多核白血球機能において活性酸素産生能は正常内であり,血液レオロジー特性は正常であり血液流動性に異常は認められなかった。白血球内F-アクチン含有量は正常範囲内であった。しかしながら,脳死後数日以内に肺酸素化能は進行性に悪化し,胸部単純レントゲン写真,胸部CT写真で肺浸潤影が出現し肺胞性病変が出現した。血中CRP, IL-6は脳死後,著明に増加した。気管分泌物の細菌培養は脳死前後で陰性であり,細菌性呼吸器感染症以外の因子の関与が推察された。一方,血液レオロジー特性は低下し血液流動性は顕著に悪化していた。その原因は白血球内F-アクチン含有量増加による白血球変形能の低下が示唆された。その結果,肺微小循環が傷害され肺酸素化能が低下したものと推察された。以上の結果から脳死後,何らかの神経・内分泌・免疫系の破綻が起こり,白血球の機能異常,炎症過剰が脳死後の非感染性肺傷害の一因であると考えられた。現在,脳死後の炎症過剰状態を制御するべくステロイドなどの抗炎症薬,多核白血球エラスターゼ阻害薬等の肺傷害抑制作用を検討している。
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