2001 Fiscal Year Annual Research Report
走運動時のストレス反応は脳内のオレキシン作動性機構を介するか?
Project/Area Number |
13878005
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
征矢 英昭 筑波大学, 体育科学系, 助教授 (50221346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 武 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (60251055)
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Keywords | 運動 / 走運動 / 遊泳運動 / ストレス反応 / オレキシン / 視床下部 / c-Fosタンパク |
Research Abstract |
1998年に新たに視床下部摂食中枢から発見された神経性ペプチド,オレキシン(orexin)は,ストレス反応や循環調節,睡眠-覚醒調節に関与することが明らかとなってきた.しかし,運動時のストレス反応やそれに関連した循環・代謝応答への関与は不明である.本研究は走運動時のACTH分泌応答(ストレス反応)へのオレキシン作動性神経の関与について明らかにすることを目的とした.実験は,1)オレキシン含有神経の活性化が運動時のACTH分泌反応で増加するかどうか,さらに,2)オレキシン含有神経を欠落させる遺伝子導入マウスを用い,オレキシン機能のストレス反応への関与について併せて検討を試みた.走運動時のオレキシン神経の活性化は,運動後に摘出した脳の前額断切片(40μm)を作成し,免疫組織化学的染色によるオレキシン陽性ならびに神経興奮の分子マーカとなるc-Fosタンパクの二重染色を施し,オレキシン/c-Fos二重標識細胞数の割合をカウントすることにより求めた.その結果,オレキシン含有神経は,ACTH分泌が生じる閾値でもある乳酸性作業閾値(LT)を越える走速度時にc-Fosタンパクを多く発現させた.LT以下の走速度では変化はみられなかった.この傾向は,遊泳運動時にもみられた.これらの結果は,走運動を含む運動時のストレス反応とオレキシン作動性神経の活性化が同期することを示し,オレキシンが運動時のストレス反応に何らかの役割を演ずる可能性が示唆された.しかし,オレキシン欠落マウス(-/-)とその対照マウス(+/-)との間には有意差はなかったので,オレキシンのストレス反応への直接的関与を確認するには至らなかった.飼育上の問題で遺伝子導入マウスの引数が不十分(3匹)だったことなどいくつか原因が考えられる.今後,この結果をもとに,モデル動物の例数を増やし,運動の条件(速度や時間)を変えて詳細に検討する必要がある.
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