2002 Fiscal Year Annual Research Report
コンビナトリアル的手法によるグリコシダーゼの基質特異性の迅速決定法
Project/Area Number |
13878118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 完三 京都大学, 化学研究所, 教授 (20087563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 文一 京都大学, 化学研究所, 助手 (50324695)
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80199075)
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Keywords | グリコシダーゼ / コンビナトリアル / 基質ライブラリー / 基質特異性 / アグリコンライブラリー / グルコシダーゼ / 基質特異性迅速決定法 |
Research Abstract |
前年度の予備的成果をもとに、種々のアグリコンを有する配糖体からなる基質ライブラリーを混合物のまま各種グリコシダーゼに作用させ、遊離するアグリコンをGC-MS等で経時的に追跡・定量することにより、グリコシダーゼのアグリコン特異性を迅速かつ簡便に評価し、それをパターンとして特徴付けることができる画期的な新手法の開発に成功した。 グリコシダーゼの基質特異性は速度論的パラメーターであるk_<cal>/K_m値によつて評価されるが、これを求めるのは大変手間がかかる。重要なのはk_<cal>/K_m値の比であることに注目し、ミカエリス-メンテンの仮定をもとに、2つの基質AとBが競合する時、v_A/v_B={(k_<cal>/K_m)_A/(k_<cal>/K_m)_B}([A]/[B])…(1)となることから、複数の基質を混合して酵素反応を行い、その反応初速度からk_<cal>/K_m値の比を迅速に決定できる可能性があることを見出し、β-グルコシダーゼをモデルにして、以下のように研究を行った。 基質となるβ-グルコシドとして、C_<5〜8>の種々のアルコールをアグリコンとする6種のモデル化合物(1a-f)を合成した。まず、混合基質を用いた酵素反応により生成したアルコールの混合物を抽出し、GC-MSで一度に分離、定量する一連の方法を確立し、ここに提案した方法で真の基質特異性が評価が可能か検証した。アーモンド由来のβ-グルコシダーゼに対して、1a-fの基質それぞれを単独で反応させて速度論的パラメーターV'_<max>/K_mを得た。次に、6種類の基質1a-fを混合して反応させ、それぞれの基質に対する初速度v'を求めた(V'_<max>およびv'は、見かけのV_<max>およびvを、用いた酵素単位(U)で割った値)。その結果、混合基質を用いて酵素反応を行った場合の、各基質のv'の相対値は、個々の基質を用いて測定したV'_<max>/K_mの相対値によく一致し、この方法により酵素の相対的な基質特異性を簡便に求められることが確かめられた。反対に、1a-fの基質それぞれを単独で用いて酵素反応を行った場合、それぞれの基質の反応初速度v'の相対値はV'_<max>/K_mの相対値と一致しなかった。これは、式(1)が示す通り、一定濃度の基質を単独で用いた場合、その反応初速度を比較しても真の基質特異性は評価できず、基質を混合して反応させた場合には、反応初速度から真の基質特異性が評価できることを示している。次に、Aspergillus niger由来のβ-グルコシダーゼに対して同様に調べた結果、v'の相対値はアーモンド由来のβ-グルコシダーゼとは異なるパターンを示し、この酵素固有のアグリコン特異性を示したことから、この方法で各β-グルコシダーゼのアグリコン特異性の特徴が表せることが明らかとなった。
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