2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本語とトルコ語の母語および第2言語としての文処理
Project/Area Number |
13F03004
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広瀬 友紀 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KAHRAMAN Baris 東京大学, 大学院総合文化研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 日本語 / トルコ語 / 文処理 / 第一言語・第二言語 / 関係節 / 分裂文 / 母語話者 / 日本語学習者 |
Research Abstract |
・外国人特別研究員が来日する前にトルコで行った「トルコ語母語話者による再帰代名詞の解釈」、「トルコ語を母語とする日本語学習者による代名詞・再帰代名詞や関係節付加曖昧性の解釈」、「トルコ語のかき混ぜ構文処理過程」に関する調査の結果を分析し、その成果を国内外の学会で発表した。これらの研究は、トルコ語母語話者およびトルコ語を母語とする日本語学習者による代名詞や再帰代名詞、関係節付加曖昧性などの解釈を実験的手法を用いて体系的に調べた先端的研究のひとつである。これらの研究ではトルコ語母語話者によるトルコ語及び日本語の様々な構文の理解・解釈過程において、文法的制約あるいは、語用論的制約だけでは説明できないことと、文の理解・解釈には語彙や談話から得られる情報も関与していることが示唆された。今後、これらの研究成果を論文にまとめ、国際学術雑誌への投稿を計画している。 ・「日本語分裂文及び関係節の処理」 : 来日してから「先生を/が見かけたのは学生だ」のような分裂文と「先生を/が見かけた学生は. ..」のような関係節の処理の非対称性が文のどの段階で観察されるか、また処理の難易度を決定する主要因は何であるかという疑問について調べるために、ノーミング調査、文完成課題、自己ペース読文課題、眼球運動を測定する実験を実施した。ノーミング調査では実験で使用する文の尤もらしさを確認し、文完成課題では日本語母語話者が「「先生を/が見かけた(のは)」のような文の断片を読んだ場合どのような構造を予測するかを検討した。その結果、動詞まで読んだ時点で関係節に比べて分裂文に対する予測可能性が高いことが示唆された。自己ペース読文実験及び眼球運動実験では日本語母語話者が分裂文及び関係節を読んでいる際に処理の難易度が文のどこでどのように観察されるかを検討した。自己―ペース課題の結果、主語関係節及び主語分裂文の方が目的語関係節及び目的語分裂より処理しやすいことが分かった。また、関係節の場合は処理の非対称性が主名詞の位置で観察され、分裂文の場合は埋め込み動詞の位置で観察された。この結果は日本語の関係節と分裂文の処理の難易度が類似しているが、処理の非対称性が観察される位置が異なっていることと、動詞に付加される形態素の有無が日本語の文処理過程において最も重要な情報源のひとつであることを示唆している。また、今回得られ全体の結果は、確率論的要因では捉えられないが、構造的要因で捉えられる。今後眼球運動実験の結果も分析し、研究成果を国際学会で発表してから論文を国際学術雑誌へ投稿する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
来日する前に行った調査の結果を国内学会で発表し、論文を投稿する準備を進めている。また、最初に予定していた日本語分裂文と関係節の処理に関する実験を実施し、現段階では従来の仮説で説明可能な結果が得られていると言える。眼球運動を指標とした実験の結果を分析した後、国際学会で発表をする予定である。そこで得られるフィードバックにもとに追実験を行い、考察を深めた上で、論文を国際学術雑誌へ投稿する。さらに、本研究と同時に関係節や混ぜ構文などの処理に関して他の実験も行った。その成果を分析した後、学会で発表し、論文の投稿を目指す予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 第二言語としての日本語の文処理の難易度に関与する要因の解明を追及するため、関係節と分裂文の処理過程を調べる。関係節の場合は主語と目的関係節に加え、「先生が/の書いた論文. ..」のような「ガ・ノ」交替が見られる関係節の処理過程を眼球運動測定を通して調べる。 2. 第一言語としての日本語やトルコ語のような主要部後置型言語の関係節処理に関わる要因について対照的に検討するため、トルコ語でも実験を実施する。トルコ語では、実験操作により、格助詞から得られる情報を統一することができる。そのため、主要部後置型言語では格助詞からの情報が統一された場合、主語関係節と目的語関係節の処理過程がどのように変化するかを研究することにより、格助詞から得られる統語構造に関する情報の相違が主要部後置型言語の文処理過程に与える影響について検討できる。
|
Research Products
(10 results)