2013 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジンD2とJ2シリーズの生合成と脂肪細胞形成と肥満での多様な作用
Project/Area Number |
13F03091
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
横田 一成 島根大学, 生物資源科学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FATEMA P. S. 島根大学, 生物資源科学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 脂肪細胞 / プロスタグランジン / シクロオキシゲナーゼ / PGD_2 / PGJ_2誘導体 / 11-デオキシ-11-メチレン-PGD_2 / 細胞表面受容体サブタイプ |
Research Abstract |
脂肪細胞やその前駆細胞に対するプロスタグランジン(PG)類の作用機構は、より複雑になっている。その理由として、個々のPG類に対して複数の受容体が存在し、それらは、異なるシグナル伝達経路を介して脂肪形成に対する作用も多彩となっているからである。アラキドン酸シクロオキシゲナーゼ経路のPGD_2とその脱水化合物であるPGJ_2関連化合物は、脂肪細胞形成を促進するが知られている。今回、脂肪細胞形成におけるPGD_2の多様な作用をさらに探求する研究を実施した。そのために、一定の培養条件で脂肪細胞に分化誘導できて成熟脂肪細胞を形成する前駆脂肪細胞株を利用して、外因性PGD_2と、その安定類縁体である11-デオキシ-11-メチレン-PGD_2の作用機構の解析を行った。その結果、分化誘導後の成熟期において、内因性PG類の生合成を阻害するアスピリンの存在下において、外因性のPGD_2とその安定類縁体の作用を添加して培養を継続すると、11-デオキシ-11-メチレン-PGD_2は、PGD,やPGJ_2関連物質に匹敵した脂肪形成の促進効果を示した。PGD_2の2つの細胞表面受容体サブタイプに対する特異的なアンタゴニストの作用の解析より、11-デオキシ-11-メチレン-PGD_2は、DP1受容体よりも主にDP_2/CRTH2受容体を介する細胞情報伝達系を介して作用していることが示唆された。現在、その作用機構の特異性や作用後の脂肪細胞形成に至る遺伝子発現の調節機構について、さらなる解析研究を継続中である。これまでに、生理活性作用がほとんど報告されていないPGD_2安定類縁体が示す脂肪細胞の成熟化の促進効果は、不安定なPGD_2とは異なる作用様式である点も興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究により、脂肪細胞の形成過程に対するPGD_2の作用は、PGJ_2関連物質に変換した後に核内受容体を介する経路がよく知られているが、今回の研究により、PGJ_2に変換しないでPGD_2の状態で細胞表面の受容体を介した脂肪細胞の形成促進効果を新規に解明できたのは有用な成果である。研究成果は、国内外での学会での発表や国際的な学術誌に発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究室では、研究計画の課題に関連してPGD_2やPGJ_2関連物質の生合成調節機構や代謝産物の特異的で高感度の定量的な測定のための研究も平行して行っている。すなわち、個々のPG類に対する特異的な抗体を利用した酵素免疫測定法の開発研究やタンデム型の液体クロマトグラフィー質量分析計によるPG類の一斉分析手法の確立ための研究が同時に進行している。従って、当初の研究計画に基づいて、脂肪細胞の形成や機能変化におけるPG類の役割を解明する研究を推進できる状況である。
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Research Products
(4 results)