2014 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症スペクトラム障害児におけるナラティブと自己・他者理解の発達的因果関係の解明
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13F03313
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本郷 一夫 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30173652)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Heebok 東北大学, 教育学研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / ナラティブ / 自己理解 / 他者理解 / 因果関係 / 共同構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)児を対象とし、空想の出来事あるいは自分の過去の経験を振り返り、意味づけるナラティブと自己・他者理解との発達的因果関係を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、1.ASD児におけるナラティブの特性と自己・他者理解の特性との関連、及びその背景要因を検討すること、2.自己・他者理解が発達していないASD児(自己・他者理解を問う課題に未通過の者)を追跡調査し、ナラティブと自己・他者理解がどのように発達していくのかについて示すことが必要である。 今年度は1.に関して2つの研究を行った。1つ目は、小学校のASD児(13名)と小学生の典型発達児(29名)のナラティブの特性を比較し、自己意識との関連について検討した。結果、ASD児は典型発達児に比べて自分の経験を振り返り、意味づけることに弱さが示されたとともに、ASD児のナラティブにおける自己意識的言及(所有格・自己意識的感情語)が少ないことが示され、ASD児のナラティブを行うことの弱さと自己意識の弱さとの関連が考察された。2つ目は、ナラティブと自己・他者理解の発達を促す背景要因として、母親のかかわり方に注目し、ASD児のナラティブにおける発言との関連を検討した。6歳から12歳までのASD児を対象とし、母親と一緒にナラティブを行う共同構成課題を行った結果、子どもの記憶をより掘り下げるかかわりを行う(精緻化タイプ)母親のASD児の方がそうではない母親のASD児に比べて、より多くの情報を想起していることが示された。 今後は、母親のかかわり方とASD児の自己・他者理解課題の通過との関連を明らかにするとともに、2.自己・他者理解の未発達児の追跡調査を行うことを通して、ナラティブの発達と自己・他者理解の発達との関連を示す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の開始当初の研究計画では、横断的なデータから発達的因果関係について論じる方法を考えていたが、発達的因果関係を明確に示すためには時間軸による縦断的調査の必要性が考えられた。そのため、方法論を修正し、ナラティブ及び自己・他者理解が発達する時期である6歳から12歳までという年齢を選定し、対象児の募集を行った。しかし、6歳から12歳までの知的発達に遅れのないASD児という非常に限定的な対象児の募集に時間がかかり、データ収集において予定より遅れていたため、現在の達成度としてはやや遅れていると判断するのが妥当であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下のように研究を進めていく予定である。1.現在収集したASD児のデータから、母親のかかわり方とASD児の自己・他者理解に関する課題通過有無との関連を分析する。この結果に関しては、国内外の学会で発表する予定である。2.6歳~12歳までのASD児のうち、自己・他者理解に関する課題に未通過の者を対象に、6か月後の追跡調査を行う。3.現在収集したデータに加え、さらにデータを集めていき、1.と2.に関する知見をより確かなものにしていく予定である。 対象児の募集における困難さに関する対策としては、一つの地域での募集ではなく、様々な地域で募集をかけ、研究に必要な人数を確保していく予定である。
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