2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子色力学のエンタングルメント・エントロピーを用いた研究
Project/Area Number |
13F03317
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高柳 匡 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HE Song 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
|
Keywords | 超弦理論 / AdS/CFT対応 / 量子エンタングルメント |
Research Abstract |
外国人特別研究員のHe氏が我々の研究室に転勤したのは、昨年の10月であり、これまでの半年間にプレプリントarXiv : 1403.0702を共同執筆した(現在、雑誌に投稿中)。この論文では、局所的な演算子によって定義される励起状態のエンタングルメント・エントロピーの解析を行った。研究代表者らの先行研究では、自由場理論に関して具体的な計算を行ったが、次のステップとして相互作用している共形場の理論の場合の解析を行うことが重要である。なぜならば、AdS/CFT対応を用いると古典重力理論に対応するのは強結合の共形場理論だからである。そこで、He氏と研究代表者は、比較的扱いやすい有理型2次元共形場理論に着目し、Renyiエントロピーの解析を厳密に行った。このRenyiエントロピーは極限としてエンタングルメント・エントロピーを含む。その結果、どちらのエントロピーも演算子の量子次元と呼ばれる量の対数で与えられることを見出した。この我々の成果は、相互作用している共形場理論においてもエンタングルメント・エントロピーを解析的に理解できることを意味し、今後の研究に大変有用である。また単純に考えると、励起のエネルギーに比例して、エンタングルメント・エントロピーも増えると予想されるが、我々の結果はこの予想が正しくなく、エネルギーではなく、量子次元という演算子の自由度を測る量と関係することを示している。 この研究をさらに発展させて、リュービル理論のような有理型ではない2次元共形場の理論の場合にはどのような結果が得られるのか、引き続き研究を行っている。既に研究代表者とHe氏は、この場合には、エンタングルメント・エントロピーと量子次元の関係は修正を受けることを見出している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
He氏が着任してから半年程度しかたたないが、既に前述のプレプリントにまとめた成果(2次元共形場理論の励起状態のエンタングルメント・エントロピーの計算)を得ているため。また今後の方向性もいくつか具体的に定まってきたので。
|
Strategy for Future Research Activity |
局所演算子による励起状態のエンタングルメント・エントロピーの解析をさらに進めたい。特に、局所演算子の和で書ける場合にエンタングルメント・エントロピーがどのように振る舞うか明らかにしたい。また、ゲージ理論の励起状態のエンタングルメント・エントロピーの計算を行い、AdS/CFT対応による重力理論を用いた解析と比較したい。
|
Research Products
(2 results)