2014 Fiscal Year Annual Research Report
化学メカニズムに基づく新しいSERSセンシングプラットフォームの開発
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13F03332
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
尾崎 幸洋 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00147290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JI Wei 関西学院大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラマン散乱 / 表面増強ラマン散乱 / 酸化チタン / 化学メカニズム / 半導体 / センシング / クロム / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
表面増強ラマン散乱(Surface Enhanced Raman Scattering: SERS)は、その発見から早45年近くを迎える。極めて興味深い物理現象で、多くの研究者がSERSの基礎と応用の研究に挑戦してきた。SERSは極めて高い感度を持つものの、スペクトル測定の再現性、安定性等において、大きな問題があり、これまで実用的応用が実現していない。私の研究はSERSの実用的応用を目指すために、化学的増強メカニズムによる安定性、再現性に優れたSERSセンシングプラットフォームを構築することである。 2014年私はもともとの研究計画に基づいて、以下のような研究を行った。私は表面増強ラマン散乱のための“turn-off”戦略を提案した。この戦略が小さな無機分子やイオンの定量分析のための半導体基盤SERSセンシングを実現するための、効果的な方法として使えることを示した。アリザリンレッドに敏感なコロイド状の酸化チタン系がクロム(Ⅵ)の定量のためのラマンプローブとして用いられた。私はラベルされた分子の分解を触媒するために、半導体の光触媒の性質を利用した。そしてSERSシグナルの減少を観測した。クロム(Ⅵ)の定量分析は“turn-off” SERSシグナルの強度のモニターにより行った。その結果“turn-off” SERS戦略が半導体基盤のSERSセンシングの感度を増加する効果的方法であるということが示された。さらに私は化学増強の第一層の効果があるところにおいて、水溶液中のリン酸アニオンの選択的検出のための簡単な半導体基盤SERSセンシングをデザインした。一方半導体基盤SERSセンサーの半導体の安定性と再現性を系統的に議論した。このように半導体基盤ラマン散乱が素晴らしい安定性と再現性を持つセンサーを作り上げるのに、多いなる可能性があるということが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私は半導体基盤SERS技術を用いた小さな無機分子と金属イオン検出の研究を終了した。この半導体基盤SERSセンシングは、これまでのものと比べて感度ではまずまずであるが、安定性、再現性では相当優れたものとなっている。また半導体を用いるので、環境にやさしいシステムと言える。実際の環境と深い関わりのあるクロムⅥを用いて、定量性にも優れていることが分かった。さらに私は化学増強メカニズムが半導体基盤SERSにおいて鍵となる役割を果たしていることを見つけた。私の知る限り、私の研究は半導体におけるSERSの実際的応用の最初の例の一つである。予定どおりこのテーマに関する論文(1. Wei Ji, Yue Wang, Ichiro Tanabe, Xiaoxia Han, Bing Zhao and Yukihiro Ozaki, Semiconductor-driven “turn-off” surface-enhanced Raman scattering spectroscopy: application in selective determination of chromium (Ⅳ) in water, Chemical Science, 6, 342-348 (2014) 2. Wei Ji, Wei Song, Ichiro Tanabe, Yue Wang, Bing Zhao and Yukihiro Ozaki, Semiconductor-enhanced Raman scattering for highly robust SERS sensing: the case of phosphate analysis, Chemical Communications, 51, 7641-7644 (2014) )も作成し、出版された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は化学メカニズムに基づくさらに新しいSERSセンシングプラットフォームの構築の研究を行う。このプラットフォームは、27年度に実現した半導体基盤SERSセンシングシステムを改良するものである。これまでSERSは生体物質や環境物質の高感度分析などいろいろなところで応用されてきたが、いまだ実用的な応用には至っていない。それはSERSのメカニズムそのものがよくわかっていないからである。本研究では平成25,26年度の研究で明らかになった半導体基盤SERSセンシングシステムを改良し、これを用いて硫黄原子を含む芳香族系環境物質のセンシングを試みる。現実の環境物質に近いものを用いて、検出限界、再現性、定量性などについて検討する。
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Research Products
(10 results)