2013 Fiscal Year Annual Research Report
微生物燃料電池バイオカソードにおけるモデル細菌の単離とその電子移動機構の解明
Project/Area Number |
13F03341
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 和仁 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KALATHIL Shafeer 東京大学, 大学院工学系研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 微生物燃料電池 / 細胞外電子移動 / バイオカソード / 微生物代謝 / 廃水処理技術 |
Research Abstract |
本研究では、電極上に形成した微生物膜の代謝反応を利用した新しい電極微生物触媒の開発を進めている。廃水など環境中にいる生きた微生物をそのまま電極触媒として利用することで、従来の白金などの希少金属を用いる無機触媒に比べ、極めて安価で、かつ自己再生・複製能を有した安定な機能発現が期待出来る。現状では、微生物膜触媒は無機触媒に比べてその効率が劣ることが報告されているが、微生物膜内における優先種や、その電子移動メカニズムは全く解明されておらず、そのポテンシャルは未知である。そこで、本研究では、①高い電子引き抜き能を持つ菌を微生物群集から単離するための実験系の構築と、②既知の電流生成菌における電子引き抜き機構の検討を行った。①においては、研究実施計画に記載した微生物反応系を構築し、廃水処理施設からサンプリングした汚泥を微生物源として微生物電気集積を行った。その結果、当初の目論見通り、電極触媒能を有する微生物薄膜が形成することが確認された。電極表面における優先種を集積するために、微生物を含まない人工排水への置換を一週間に一度繰り返しながら、現在も長期間の電極培養を行っている。菌叢解析は今後行うが、少数の優先種への集積が成功していれば、困難が予想される微生物単離へと大きく近づくことになる。②電極からの電子引き抜き反応におけるモデル微生物には鉄還元細菌Shewanellaを選定した。これまでの我々の検討から、細胞外膜タンパク質におけるフラビン反応中心が直接電極表面から電子を引き抜く機構が明らかとなっている。我々が廃水処理を想定して様々なイオン強度で検討を行ったところ、膜タンパク質と結合フラビン分子間の相互作用が大きく影響を受け、それに伴い電子移動速度が変化する事が明らかとなった。このようなイオン強度依存性は、生化学的な重要性に止まらず、バイオカソード廃水処理における廃水の初期調整における知見としても重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実廃水を微生物源として電極上に微生物を電気集積する実験は、電極触媒活性を有する微生物膜が優先的に得られており、当初の計画通り進んでいる。一方で、微生物が電子を引き抜く機構に関しては、イオン強度が電子移動エネルギー論に大きな影響を与えるという新事実が明らかとなった。これは、当初の計画にはなかったが細胞外膜タンパク質の生化学的特色を示す興味深い成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
電極上に集積されている電極触媒能を持つ微生物群の菌叢解析を行い、微生物の単離を本格的に行う。また、微生物によるカソード電極からの電子引き抜き機構に関しては引き続き研究を行い、生化学的重要性のみならず、廃水処理の実用化を見据えた知見として、pHや温度依存性に関しても今後検討する。
|