2013 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理計算によるグラフェンを超える二次元材料の研究
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13F03351
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高村 由起子 (山田 由起子) 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GIMBERT Florian 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 第一原理電子状態計算 / 二次元材料 / シリセン / ゲルマネン / グラフェン |
Research Abstract |
グラフェンは二次元材料がユニークで有用な物性を持ちうることを証明したが、バンドギャップを持たないため、グラフェンを超える有用性を持った新しい二次元材料の探索が進められている。本研究では、研究代表者が走査トンネル顕微鏡等の最先端顕微鏡技術により新しい二次元材料であるシリセンやゲルマネン等の構造・電子状態解析を行い、研究分担者が、研究代表者が得た実験結果を、第一原理電子状態計算を通して理解し、得られた知見を実験にフィードバックすることでさらに研究を進展させることを目的とする。平成25年度は、二ホウ化物薄膜上の二次元ゲルマニウム(Ge)層の構造解明に挑んだ。研究代表者のグループは、Geウェハー上に成長した二ホウ化ジルコニウムの単結晶配向薄膜表面にGe超薄膜がエピタキシャルに、自己組織的に、一様に形成される現象を実験的に見いだした。ケイ素(Si)ウェハーを基板としてエピタキシャルシリセンが形成された場合とは異なる表面再構成構造が二ホウ化ジルコニウム薄膜表面上に現れ、また、表面電子状態を角度分解光電子分光で調べてみると、ダイヤモンド構造のGeとも二ホウ化ジルコニウムとも全く異なるバンド構造を示した。このエピタキシーにより安定化された新奇な二次元Ge層が一原子層よりも厚いことが実験から明らかとなり、ゲルマネンの多層構造を第一原理計算で調べたところ、二硫化モリブデンを構成する層に似た二次元構造をとったときに、ゲルマネンよりもエネルギー的に安定であることが明らかとなった。この関係は、Si系でも成立することが確かめられた。この全く新しいSiとGeの二次元材料は、その新奇な結合状態に由来して、これまでに予測されていたシリセンやグラフェンとは異なるバンド構造を有しており、今後、実験的にこのような構造が合成されているのか詳細に検討する必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者は、IV族元素であるケイ素及びゲルマニウムからなる新しい二次元材料「シリセン」と「ゲルマネン」の多層膜の第一原理計算研究を進める過程で、いままでにない、新しい二次元構造を持ち、かつ、エネルギー的に安定な同素体を発見した。この研究成果をアメリカ物理学会の年会で発表した。また、投稿論文にまとめ、査読付論文誌に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、シリセンとゲルマネン、及び、その多層膜についての研究を進めるとともに、これらと組み合わせることでその良さを引き出す新しい二次元材料の研究に着手する。シリセンやゲルマネンがグラフェンを超える二次元材料となるためには、相性の良い絶縁体、及び、酸化から守ってくれる保護層が必要である。その候補の一つがホウ素と窒素のハニカム構造からなる六方晶窒化ホウ素シートである。研究代表者のグループでは、実験的に六方晶窒化ホウ素シートをエピタキシャルシリセンが形成されるのと同じ基板である二ホウ化ジルコニウム上に形成することに成功している。今後は、この絶縁性の二次元材料である二ホウ化ジルコニウム上に形成される六方晶窒化ホウ素シートについて、第一原理電子状態計算から理解を深めてゆく。
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Research Products
(1 results)