2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ材料を複合した相変化材料の界面熱輸送機構に関する研究
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13F03358
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50311634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SIVASANKARAN Harish 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 相変化材料 / カーボンナノチューブ / カーボンナノホーン / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,材料のナノ構造と熱輸送機構の相関を理解し,所望の熱伝導率を持つ材料を設計・創製することを目的として,化学修飾されたグラフェンを有機系PCMに添加することによりPCMナノコンポジットを創製し,その熱伝導率の計測を行った.またグラフェンの添加が他の物性に及ぼす影響を検討するため,相変化エンタルピーの計測も併せて行った. 本研究で用いたPCMはラウリン酸(C12H24O2)で,融点は43℃付近,相変化エンタルピーはおおよそ150 kJ/kgである.添加材にはXGScience社のグラフェン・ナノプレートレット(複数のグラフェンシートが積み重なった構造.平均層厚5-10nm,エリアサイズ約15μm,密度2.2g/cm3)を用いた.試料の熱伝導率計測は非定常細線法にて行い,細線は直径25.4μm,長さ50mmで絶縁被膜を施した.計測された純粋なラウリン酸の熱伝導率(20℃,固相)は0.22/(mK)であるが,MLGの添加量が増加するに従い熱伝導率が高くなる傾向が見られた.今回はMLGを最大1vol%まで添加したが,その際の熱伝導率(20℃,固相)は0.49/(mK)であり,純粋な母材と比較して熱伝導率が約2.3倍高くなった.また数値計算の結果から熱伝導率を向上させるには,添加物と母材の界面熱抵抗を低減させることが重要であることも分かった.MLGの添加が他の物性に及ぼす影響を検討するため,PCMの相変化エンタルピーを計測した.今回の実験条件の範囲内ではMLGの添加が相変化エンタルピーに大きな影響を及ぼしていないことが確認された. グラフェン以外にもカーボンナノホーン等を添加剤として用いた実験も行い,材料のナノ構造と熱輸送機構の相関を検討した.得られた成果は国際的な査読制雑誌に掲載されたほか,国内外での学会にても発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はグラファイトを添加した相変化材料およびカーボンナノホーンを添加した相変化材料に関して,材料のナノ構造と熱熱伝導率の相関に関する知見を得ることができ,下記の国際的な査読制雑誌に論文発表することができた. S.Harish, D. Orejon, Y. Takata, M. Kohno, Thermal Conductivity Enhancement of Lauric Acid Phase Change nanocomposite with graphene nanoplatelets, Applied Thermal Engineering, Volume 80, 2015, pp 205-211. S.Harish, D. Orejon, Y. Takata, M. Kohno, Thermal Conductivity Enhancement of Lauric Acid Phase Change nanocomposite in Solid and Liquid State with Single-Walled Carbon Nanohorn inclusions, Thermochimica Acta, Volume 600, 2015, pp 1-6. これに加えて国内外の学会でも積極的に成果発表を行った.また各種ナノカーボンを配合したハイブリッドナノカーボンを添加する 実験も順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,材料のナノ構造と熱輸送機構の因果関係を検討するが,申請者らのこれまでの研究で液相→固相の相変化速度が「固相中におけるナノカーボン材料の配向」や「母材自体の結晶構造」に大きな影響を及ぼす結果が得られている.このため,「ナノ カーボンの構造や添加量」「相変化の速度」を主な制御因子として「材料内におけるナノカーボンの配向」・「母材の結晶構造」の制御を試みる.ナノカーボンを分散するには界面活性剤が必要なため,材料内のナノカーボンの周囲には界面活性剤が存在している.既存の研究は分散状態や分離効果という観点のみから分散剤の最適化がなされてきたが,本研究では界面熱コンダクタンスの観点から界面活性剤の効果を検討するため,界面活性剤の種類(SDS,DOC,SC,SDBS等)を変化させた実験を行う.また最終年度のため,これまでの研究を総括し,査読制国際雑誌へ研究成果を投稿する.
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