2013 Fiscal Year Annual Research Report
中性子回折を利用した低炭素鋼の動的フェライト変態機構の解明
Project/Area Number |
13F03375
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 伸泰 京都大学, 工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PARK Nokeun 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 鉄鋼 / 加工熱処理 / 動的変態 / フェライト / 相変態 / 中性子回折 / その場測定 / 転位密度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、平衡変態点(Ae3点)以上の温度に置ける鋼の動的フェライト変態の発現を実験的に証明することにある。平衡変態点以上の温度における動的フェライト変態に関しては、Yadaらが以前に、高温変形中X線その場観察による同定を行っている。しかし、通常のX線回折により得られる情報は、試料の表面近傍の微小な体積からのものに限られる。表面は材料の特異点であり、また高温では炭素鋼の脱炭が表面層で起こり、炭素量が減少すると平衡変態点は上昇することから、X線その場測定のみでは、平衡変態点以上の温度における動的変態発現の決定的証拠としてはやや弱い。そこで本研究では、J-PARCにおける中性子回折を利用したその場測定を実施する。中性子はその高い透過力により、金属材料バルク体全体からの回折情報を得ることができる。高温変形時のその場解析を行えば、FCC構造を有するオーステナイト相から、BCC構造を有するフェライト相への動的変態を直接証明できる。さらに得られる回折情報を解析する事によって、各相中の転位密度や結晶子サイズ、そして弾性ひずみをも定量的に解析する事ができる。そもそも動的フェライト変態を駆動するものが何であるのかは、未だ不明である。特に平衡変態点以上の動的変態に関しては、中性子回折を行う事によって、弾性応力・ひずみの影響、塑性変形により蓄積される転位の影響などを分離して解析する事が可能となり、動的フェライト変態を駆動するメカニズムそのものへの回答が得られる。 2013年10月から開始された本研究では、半年の間に平衡変態点以上の温度での動的変態の発現条件が、研究室(オフサイト)での系統的な熱間圧縮実験により明らかにされた。J-PARCの事故に伴うビーム停止のため、中性子実験は実施できなかったが、加工熱処理シミュレーターがTAKUMIビームラインに予定通り設置され、次年度の実験実施の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J-PARCにおける事故に伴うビーム停止のため、確保していたビームタイムはキャンセルされ、中性子その場回折実験を行うこと手まできなかった。しかし、研究室(オフサイト)での実験は順調に遂行され、動的フェライト変態の発現条件が明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度期末に、J-PARCTAKUMIビームラインに導入された加工熱処理シミュレーターを用いて、前年度明らかにした条件下での加工熱処理中その場中性子回折実験を行い、平衡変態点以上の温度における動的相変態の発現を直接証明する。
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Research Products
(8 results)