2013 Fiscal Year Annual Research Report
食品ゲルにおける官能評価と網目の構造及び運動性との関係
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13F03385
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
松川 真吾 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BRENNER T. 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 官能評価 / 物質拡散 / 磁場勾配NMR / デンドリマー / 格子モデル / フラクタル次元 / 呈味成分放出 / 拡散空間 |
Research Abstract |
本研究では、食品の官能評価性を物理化学観点からアプローチする研究手法を確立する事を目的とする。即ち、食品ゲルの食感や呈味挙動などをゲル内における物質拡散挙動から検討する。 本年度は、食品ゲル内における物質拡散空間の評価を行うために必要になってくるプローブ分子の拡散係数を拡散時間が5msから5000msまで幅広い拡散時間において計測する手法を確立することを目的とした。そのために、長いT1緩和時間を持つポリエチレングリコール鎖を末端修飾鎖として持つデンドリマーをプローブとして用いることを念頭にポリエチレンの緩和時間測定を行った。その結果、1HT1と13CT1はともに数秒程度の値となり、この程度までの拡散時間での測定が可能であることが分かった。これらの結果から、本研究において上記のデンドリマーをプローブとして用いることが有効であることが示された。 また、その網目構造の間隙(拡散空間)におけるプローブ分子の拡散時間依存性を計算機シミュレーションによる検討を行うため、高分子鎖が凝集して網目を形成する過程を格子モデルを用いてプログラム化した。その結果、凝集した網目鎖は2前後のフラクタル次元を持つ空間構造となる事が分かった。さらに、呈味成分などが拡散・浸出できる網目の間隙は、高分子の鎖長、温度低下速度に依存することが明らかとなった。これらの結果は拡散時間を幅広く変動させた拡散係数測定結果を解析するための有用な情報となる。 以上の結果は、今後、プローブ分子の拡散挙動から、網目構造や呈味成分の放出挙動を検討する上で有用な基礎的知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心となっている拡散係数測定用超高磁場勾配NMRプローブが温度センサー不良のため、海外での修理が必要になり、その間の約2か月の間、測定不能となった。そのため、通常の多核用測定プローブを用いたT1緩和時間測定と計算機シミュレーションを中心に研究を進め, 全体の達成度に遅れが出ないようにした。なお、NMR装置は全学共同利用機器となっており、磁場勾配プローブの修理費用は共同利用機器運営費用から支出される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討で得られた結果を基にプローブデンドリマーの拡散係数を拡散時間を幅広く変えて行い、拡散空間の構造(フラクタル次元など)を検討し、計算機シミュレーションで得られた結果と比較する。さらに、官能評価との関連を明らかにするために、NaClや糖などの拡散と咀嚼応力下での滲み出し・放出挙動を測定し、プローブデンドリマーの拡散測定から得られた拡散空間と比較・検討する。その中で、官能評価性の物理化学的手法によるアプローチとしての本法の有用性を評価し、改良などの可能性を検討する。
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